「さて、まずはあなた達から……司祭を名乗っているのですから、少しは私を楽しませて頂戴ね?」
 いつの間にか起ち上がり、豚は私の胸に吸い付いておりました。髭はまだ腰を振って……そろそろ二度目の射精が近そうですね。足下は白濁液で汚れています。チビは何度射精したのかしら? ただ己の快楽を貪るだけの司祭達……苦痛も苦悩も、彼らにはもはや関係ありません。女神の意向に逆らっておりますが、そんなことを感じることもない。淫魔香によって思考を淫らに焼き尽くされた彼らに、快楽以外の感情はもはや存在しないのです。
「くそ、こんなこと……ああ、くそ、くそっ! ローエよ、女神ローエよ、私は……ああ、だが私は……ハァ、ん、くぅ……」
 理性あるルーサーだけが、この現状に心を痛め状況を嘆き女神に謝罪し、それでも快楽の誘惑に逆らえず……そんな自分に苦悩しております。苦痛と苦悩を女神に捧げるこの調教部屋で、ローエ教団司祭としての務めを彼はまだ果たしている……と、言えるのかしらね。それも結局は、見方次第ではありますが。
 司祭達と乱交する裏切り者の姿に興奮し、ルーサーは自慰をしております。客観的に見た光景では、ルーサーは群がる他の司祭とでは「直接触れているか」という違いがあります。ですが「理性あるルーサー」と「性欲に支配された他の者達」と考えれば、その違いは私との接触という違いは小さなものでしかなく、もっと別の大きな差異があります。何処を見て何処を考慮し何処を評価するのか……この状況にどんな「価値」を見出すのか、それこそ、立場と考え方に寄りけり……かつて私が愛し崇拝した女神ローエ様。あなたはこの光景をどうご覧になっておりますか? 歯がゆく思ってくださるのならば……フフッ、あなた様に「苦悩」をお届けできて、光栄ですわ。
「ん、ようやく私も……ほら、もっと奥まで、突きなさいな、ん、ほら、脚ばかり舐めてないで……ええそう、そこも……ん、まだよ、まだ、この程度では物足りないわ……」
 私が指で淫唇を開いてみせると、ようやくチビがそこを直に舐め始める。豚は相変わらず胸にしゃぶりついて、自分で腰を振りながら激しく陰茎をしごいているわ。まったく、私を楽しむのは良いのですが、私を楽しませようとは……考える思考は、既にありませんでしたわね。そういえば、髭はとうに二度目の射精を終え、三度目に向けまだ腰を振っておりますのね。ルーサーだけはまだ射精しておりませんが……。
「出したいかしら?」
 私は性欲の獣と化した三人を無視し、一人の人間に問いかけます。思考を性欲に支配されながらも自我を保っているその男は、言葉による返答を拒んでおります……が、荒げる息と止まらぬ手を見れば、それが答えとなるでしょう。
「いいわよ、遠慮なさらず……そうね、折角ですから「あそこ」に「奉納」してみては?」
 私が指さしたその先には、祭壇。拷問による苦痛と苦悩をそのまま女神に捧げられるよう、ローエ教団の調教室には女神像を祀った小さな祭壇が設置されております。私はそこに射精しろと……そう、ルーサーに提案しました。この指令に拘束力はありません。特に射精を抑制するような術を施してもおりませんし、彼が望むならこのまま私を見ながらその場で射精することも可能です。それでも……。
「ああ、ローエ様……我が女神よ……私は、私は……」
 懺悔しながら、彼は女神像によろよろと歩み寄ります。そしてとうとう……女神像へ直に白い供物を奉納してしまいました。銅色にどろりと白い液体……元々ローエはその美しさに定評がありましたが、白化粧がより女神を艶やかに彩ります。それを女神が喜ぶかは別の話ですが……しかし女神よ、あなたの信者が「女神を汚してしまった」という苦悩に喘いでいるその心中を、どうかお納めくださいませね。
「フフッ、ずいぶんと沢山出しましたのね……さあ、次はどこに出したいかしら?」
 女神を冒涜したにもかかわらず、ルーサーはまだ素直に願望を口にしようといたしません。一度射精したことで僅かでも性欲を抑えることが出来ているから? いいえ、彼の性欲はむしろ増しているはず……自分のしてしまったことに対する苦悩、女神を汚したという背徳行為、それらは彼の性癖を刺激しています。そんなことは聞くまでもなく震える彼を見ていれば判る事ですが……ルーサーにはその答えをハッキリ口にする「苦悩」を味わって貰わなければね。そうすることにより、彼の「旨味」が増すというもの。既に三人の獣から幾度も射精を受け止めている私ですが……この者達の精液なんて、前菜にもなりません。ただ出すだけの精液に、なんの面白みがありまして? そうね、ルーサーの旨味を引き出す前に、そろそろこの「前戯」を終いにしてしまいましょうか。
「いいわ、しばらくそこでまた待ってなさい。さて……そろそろ吸い尽くしてあげましょうか、ウフフ」
 前菜にも前戯にもならない獣達にもう用はありません。苦痛も苦悩もない、快楽の中で朽ち果てて貰いましょうか……女神が見つめる祭壇の前で。
 さて吸い尽くすにしても……この三人を同時に相手するのは少々面倒ね。一人、早々に片付けてしまいましょか。
「ブヒィ!」
 あら、本当に豚みたいに鳴いたわコイツ……私は胸に吸い付き激しく揉み続けていた豚を引き寄せ、そして首元に噛み付いた。ええもちろん、豚の生き血を全て吸い尽くすために。
「おま、え……」
 豚を吸血する姿を見て、ルーサーが自慰を止めてしまうほどに驚いている。そうね、私が淫魔になったことはどこからか聞き及んでいるでしょうけど、吸血鬼でもあることは知らなかったのでしょう。
 そもそもレイリー様が淫魔と吸血鬼のハーフで、私達眷属がその能力を受け継いでいるということは、公言しておりません。ですが街を「魅了」で支配していることは街に訪れる知識ある者ならばすぐに察しは付くでしょう。ですから「街の支配者は淫魔だ」という事は、それなりに知れ渡っております。ですが吸血行為はおおっぴらに行っていませんから、その事実を知るものは当人以外では選ばれた「贄」だけ。ルーサーが驚くのは当然ですわね。
 ではそのルーサーに、理性ある彼に吸血行為を見せているのは何故か? ふふ、それだけ私は彼を気に入ったということですよ。彼はいずれ「贄」になれる男だとね。
 それはそうと……脂肪の塊はそれなりに血を吸われ、しぼんでいきます。それでも自慰だけは止めずに、あらあら射精までしているわ。死の間際まで快楽に包まれる……ローエ信者にとっては屈辱的な死に様ね。でも当人は幸せでしょう? この私によって幸せに死ねたローエ司祭……その魂は崇拝していた女神の元へ行けず、さりとて邪神を崇拝していた魂に真っ当な逝く先が定まるとは思えませんし、さてどうなるのでしょうね。少し想像しただけでも愉快な結末でしょう?
「どうしました? ルーサー。吸血鬼でもある私には、もうあなたを夢中にさせるだけの魅力はないかしら?」
 豚という障壁が無くなり、ルーサーからは私の姿がよく見えているはず……彼を見つめる潤んだ瞳、唇に付いた血をゆっくりと舐め取る舌、汗ばんでいる首筋、鎖骨、そして後ろから髭に激しく揉まれる胸、後ろから突かれ微かに揺れるくびれた腰、その腰につられプルンと揺れる臀部、チビに舐められ唾液と愛液でテラテラに濡れた淫唇……彼にとって残念なのは、更にその下はチビによって阻まれていることかしら。
「あ、ああ……」
 譫言のように呟くルーサー。ゆっくりと、彼の手は「正位置」に収まって行きます。そしてその手は収まった時と同じようにゆっくりと、ですがしっかりと、自身の陰茎を快楽へ導こうと動き出しました。ただ、彼はそれ以上の行為実行……性欲の対象となっている私に近づこうとはしません。
 彼には理性がまだ残っているから……「待て」と言われてそれを守ることが、彼にも私にも「気持ち良いこと」なのだと、彼は判っているから。躾けられた犬が躾け通りに行動するのは、その後にご褒美があることを理解しているから。つまりはそういうことです。ところが躾のなっていない……理性のない獣二匹は好き勝手に性欲を爆発させています。
 そう、この二匹は自分が思うままに性欲を見たそうとしているはずですが……チビは舐めるばかりで自分の物を入れようとはしませんね……その一物も脚にこすりつけるだけですし……このチビ、そもそも真っ当な性癖を持ち合わせていないという事かしら。でしたら……私はしがみついているチビを蹴飛ばすように振り解き、そして床に倒れたチビの一物を強く踏みつけました。
「ヒギィ!」
「まるでヒキガエルのような悲鳴ね。あらあら、射精までしちゃってまったく……気持ち悪いのは顔だけにして欲しいわ。踏みつけられて気持ち良かった? 自分で擦りつけるよりこうして欲しかったのかしら?」
 醜い顔を更にしかめ歪ませながら、チビはギィギィと喚き、そしてドクドクと射精し続けます。淫魔としては直接精液を吸い取った方が良いのですが、ハーフリング一人から搾り取る量なんてたかがしれてます。それよりはとっとと搾り取って終わりにした方が効率的です。それに、こうして踏みつけてあげているのはチビのためというよりは、これから味わう精液をより美味しくするための下ごしらえのような物ですから。
「このチビが羨ましいかしら? ルーサー」
 チビの股間を踏みつけながら、私はルーサーに問う。ローエ信者である彼にも、チビが味わっている被虐的快楽を求める心はあるはず。そんな彼の欲求を私はこうして刺激し、彼の性欲をどんどん高ぶらせていく。
「く、あ……」
 もう限界かしら? まだ理性は残っているようだけど、まともな思考はとうに失せているわね。そろそろ「食べ頃」かしら……ならいいかげんこの二ひ……あら?
「……思ったよりもあっけなかったわね」
 気付けば私の背中に張り付いて腰を振っていた髭が、ずるりと力なく倒れておりました。直前まで腰を振っていたはずですが、さして面白みもなかったので途中から気にも止めておりませんでしたけれど……まあいいでしょう。おそらく髭の意識は私が気に掛けなくなったあたりでなくなっていたと思いますが、それでも性欲に染まった本能が腰を振り続けさせ、命を削って続けていた。射精もしかり。そうして全ての力を射精に注ぎ込んだ髭はそのまま絶命……このような場合でも「腹上死」と言えるのかしらね? ずっと後ろに張り付いていただけですが。
 まあいいでしょう、手間が省けたというものです。この際もうチビは構うだけ無駄ですわね。早速、熟し切ったルーサーをいただきましょうか。
「さあ、次はあなたの番よ? ルーサー……選びなさい。このままローエの信仰を貫き、煮え切らないこの「苦悩」を味わい続けるか、それともこの私に跪き快楽を得るのか……ハッキリと、あなたの口で、心の底から求める答えを吐きなさい、さぁ!」
 手を伸ばし、私はルーサーに求める。彼が導き出す答えを。まあ、一度女神像に向け射精している時点で答えはもう出ておりますけど。
「俺は……わっ、私は……」
 彼の中でも答えはもう決まっているはず。ですがあえて口にする……これまで信仰してきたローエの教えと決別するその意志を声に出す、その決断がなかなか付けられない苦しさ……ああいいわぁ。苦悩の表情、これまでの自分を振り返りながらも目先の快楽に飛び込もうとしている自分に絶望視ながら、しかしこの私に欲情する感情を止められない……ウフフッ、やはりここまで「旨味」を引き出して正解だったようですわね。淫魔香にあっさりとやられてしまうような無能に興味はない。彼のように私をゾクゾクさせてくれなければ、私が味わう意味ないものね。
「私は……私は、セイラ、さ、様の……慈悲を、慈悲を……」
 言葉を詰まらせながらも、少しずつ、少しずつ、彼は生まれ変わろうとしている。自慰の手を早めながら。ゆっくりと変わっていくもの良いけれど、ちょっとじれったいわね。
「つまらない言い回しはいらない、もっとストレートに、気持ち良くなりたいの? さあ、答えなさい!」
「気持ち良く、気持ち良くなりたいです、セイラ様、セイラ様ぁぁあああ!」
 心からの叫び、そして射精。彼は絶叫しながら白濁液を振りまいております……ああ、なんて滑稽で哀れ、それでいて情熱的で官能的……子宮の奥がキュンと音を立てて感じてしまいます。さて、最後の一押し……これが終われば、ルーサーの全てが私の物になるわね。
「よく言えましたルーサー。フフッ、その気持ちはシッカリと受け止めてあげましょう……ですがその前に、ちゃんと「お別れ」はしないといけませんわね?」
 自分で自分の顔を表現するのは難しいのですが、私は「満面の笑み」を彼に向けているつもりです。ただ彼が私の微笑みを、その笑みに含まれた様々な感情や意味をどう受け止めたのかは計りかねますが。
「私に快楽を求めるならば、この私に全てを捧げなさい。その為には何をすべきか……判るでしょう?」
 なんだか、レイリー様が私にしたこと……私を眷属として従わせ、忠誠を誓わせたあの時の「儀式」をそのまま流用しているかのようね……あの時、レイリー様に跪き全てを差し上げたあの時の開放感と充実感、今思い出すだけでも心が満たされる想い……ルーサーもあの時の私のような心境になってくれるかしら? そうであれば私も嬉しいわね。ただ相手を苦しめるだけの快楽はもういらない。ルーサーを虜にする以上、私は彼に「愛情」持って快楽の果てへ導かなければ。
 ルーサーは私の言葉をどう受け止めたのか……しばし悩んだ末に、彼は部屋の入り口までよろよろと歩いて行きます。部屋を出て行く為ではなく、近くに置かれた「武器」を手に取るために。彼が選んだ武器はモーニングスター。どうやらそれが彼の「愛用品」のようです。
「私の全てを……セイラ様に捧げます。これが、その証……私の「忠義」にございます……」
 一度振り返り私に宣言した後、彼はまた向き直って正面に向けモーニングスターを振り下ろす。鉄球が落ちたその先は、祭壇。ルーサーは自らの手で、崇拝していた女神の銅像を祭壇ごと粉砕したのです。
「見事です、ルーサー。あなたの「忠義」、確かに見届けました……ようこそ、快楽の園へ。あなたには苦痛や苦悩だけでは得られない、幸福な情欲と悦楽が待っていますよ」
 私の前で跪き頭を垂れるルーサー。私は彼の禿げた頭を、まるで水晶玉でも磨くかのように優しく撫で回します。素肌の見える頭が、ほんのりと赤くなっていくのが判ります。あらあら、可愛いわね。
「さてルーサー。あなたの忠義に応えるため、特別にあなたの好きにこの私と繋がることを許しましょう。私に何を望みますか?」
 新たな教団へ回心した信徒に私は問いかけます。彼は頭を垂れたまま、己の願望を口にし始めました。
「……こうして真の教義に目覚める前から、セイラ様の鞭を受けてみたいと思っておりました。是非セイラ様の鞭による苦痛、その快楽をこの身に受けとうございます」
 あら、屈強な身体とは裏腹にマゾだったのかしら? いいえ、マゾでもあると言うべきね。彼も「元」ローエ信者ですから、苦痛を受ける悦びも知っていて当然。それも実力で司祭になった者ならば尚更ね。その辺に転がってるエセ司祭のように金銭で司祭の座を買った者にはマゾ調教を受けたことのない者も多いでしょうけど。
「そう、いいわよ。では私の鞭をここへ」
 垂れていた頭を更に一度深く下げ、ルーサーは手早く入り口近くまで駆け寄ります。そして手に私の鞭を持つと駆け戻り、先ほどと同じように跪いて頭を垂れ、両手で恭しく鞭を持ち上げ私に献上する姿勢を取ります。私は黙って鞭を受け取り、ルーサーに少し下がるよう手で合図を送りました。
 ヒュン、と軽く空を切る鞭の音。この音一つで、ルーサーがピクリと反応を示したのが面白いわね。そうねぇ、折角ですから彼を楽しませる前に「デモンストレーション」でもしましょうか。ゴミを片付ける意味でもちょうど良いわ。
 まずは勝手に倒れた髭から。鞭を振り下ろすと、器用に首の周囲に絡みついてくれます。この鞭はアルラウネの蔦から作った特注品。アイテムマスターフレイアさんの力作ですから、私の意のままに動いてくれますの。そうでなければいくら私が鞭の乙女と呼ばれていても、倒れている死体の首に鞭を巻き付けるなんて出来ませんわ。
 私の意志一つで、鞭全体に棘が生えます。もちろんその棘は髭の首に深々と刺さります。ドクドクと流れ出る血。鞭はその血を吸い上げ、そして私の手を伝って私の中へ……私達眷属は、口から血を吸い取るだけでなく皮膚からも吸収することが出来ます。それだから出来るお家芸。その為に用意された鞭。まさに私専用というに相応しい芸術品ですわ、この鞭は。
 死したばかりとはいえ、やはり死体の血は美味しくありません。それは瀕死のハーフリングから吸い取っても同じでしょう。ですが吸血は吸精よりも得る機会が少ないですから、今日のような「悪党狩り」の際にいただいておかなければなりません。私は干からびた髭から鞭を引き戻すと、チビに向かって再び鞭を振り下ろします。
「ヒィユゥウ!」
 悲鳴にならない、空気が抜けるような声。直接のど笛に棘が刺さってはヒキガエルも鳴けないわね。
 美味しくないとはいえ、血は血。豚の分も含めて三人分……ハーフリングを「一人分」と計算すべきか悩むところですが……ともかく三人の男から血を吸い、私は自身の身体が熱くなっていくのが判ります。人間で言えば精力剤を飲んだような状態、とでも言いましょうか。そして私の鞭を待つルーサーも、かつての同胞が私の手に掛かって死にゆく様を見て興奮しているようね。圧倒的な存在。全てを捧げた相手から受ける鞭打ち、その痛みと興奮を想像して。
 でも焦りは禁物。もっともっと、この状況を楽しまないと……私は身構えるルーサーを待たせ、近くにあったテーブルまで歩み寄ります。そこには儀式用のカップと、開いた口から異臭を放っている緑色の瓶。中身はもちろん、苦薬ね。私はカップに苦薬を満たすと、そのカップを持ってルーサーの元へゆっくりと、腰をくねらせ揺らしながら近づきます。
「始めましょうか、貴男の為の宴をね……大いなる苦痛と快楽に、カンパイ」
 私は軽くカップを彼の唇に触れさせ、そしてそのカップを私の唇に。そのまま私は苦薬を口いっぱいに含みます。空になったカップをそのまま投げ捨て、私は優しく地肌が露出した頭をそっと引き寄せ、唇を重ねる……開いた唇から苦薬が、私の唾液を交えた苦薬が彼の口へ、喉へと流し込まれていく。全てを流し終えた私は、ゆっくりと後退し、鞭を持って構えます。
 苦薬は即効性の高い薬。新薬でもそれは同じ。先ほど私も「試飲」しましたからその効果はよく判っています。あれだけの量を普通に飲み込んだら、喉を掻きむしり腹を押さえて悶絶するところ……ですがルーサーは気丈にも両足をシッカリと地に着け強く強く握り拳を作りながら耐えております……流石は私の淫魔香で理性を失わなかっただけはありますわね。これだけ耐えているのですから……おそらく、苦薬の痛みでその淫魔香は効力を失っているはず。もっとも今の私達に、淫魔香はもう意味を成しませんけれど。
 苦薬の「残り」で痛む口を、それでも私は緩やかに歪めます。彼の懸命な姿に、私は鞭で応えることとしましょう。
「ぐっ!」
 空を切る音。直ぐさま続く乾いた叩打音。鞭に付いた棘に、布の切れ端が付く。間髪入れずに、再び空を切り布を切り肉を切り、鞭は頭も顔も脂汗でまみれた男を容赦なく襲います。
「おぁ……」
 声にならない、声に出せない、声に出来ない、苦痛の叫び。内と外の痛みに耐え歪む顔。すっかり服をはぎ取られ露出する肌、そこに幾千もの赤い傷跡。鍛えられた身体にあった無数の古傷に、私はいくつもいくつも新たな傷を刻みつける。ローエという古傷を上から私という新たな支配者の傷で塗り替えるように。
 ああ、たまりません。たまりませんわ……ゾクゾクします。私の心が、身体が、悦びで震えてしまいます。苦薬を浣腸で挿入された時にも勝る悦び……途中だらしのない男達によって興ざめしてしまいましたが、ようやく、ようやく私も「感じる」事が出来ますわ。
 私達眷属は、人間だった頃とは身体の構造が異なっています。特に性行為やそれに関する生理現象は大きく異なります。例えば男の方でしたら陰茎を擦られれば勃起し射精する。女でしたら陰核をいじられれば愛液を分泌するなど……このような現象は、感情も多少関わりますがイヤでも続けられれば結果感じてしまう、そういった生理現象が人間にはあります。けれど私達にはソレがないのです。どんなに菊座を陰茎で突かれても、淫唇を長時間舐められても、感情が伴わなければ感じないのです。またソレとは正反対に、感情さえ高ぶれば肉欲は後からすぐに追いついてきます。つまり私達眷属は「心で感じている」のです。だからこそ、重要なのはテクニックではなく状況、その場のシチュエーション。
 私がルーサーの「味付け」にこだわったのは、このような事情があったからこそ。そして味付けは功を奏しました……これほど旨味を引き出せるとは、私ですら思ってもいませんでした。私の味付けが絶妙だったのは言うまでもありませんが、「素材」が思っていた以上に良質でした。ルーサー、彼は良い拾い物ですわ。
「たいしたものですね。苦薬を飲んだ上で私の鞭に耐え続けられるだなんて」
 ゼエゼエと肩で息をしておりますが、それでも膝を着くことなく立ち続けるルーサー。もちろん、彼の陰茎も雄々しく起ち続けておりますが。
「本当に……変態ね、あなた」
 私の「褒め言葉」に、彼は厳つい顔を綻ばせます。私にとって良い拾い物であると同時に、彼にとってもローエ以上の「女神」に出会え仕える悦びを噛みしめているはず。その悦びをもっと大きな物にしてあげなければね。
 厚い胸元やガッシリとした太股を傷つけてきた鞭、その先端が向かう先を私は突然変えてみる。
「ぐっ!」
 予期せぬ動きに、ルーサーは戸惑いながら顔をしかめ、首に絡まった鞭を両手で掴んでおります。このまま引っ張られては力負けしてしまいまが、彼は首を絞められたままこれ以上の抵抗を試みようとはしません。ようするに、「お約束」ということですわね。
 首に絡めた鞭を、私はグイッと斜め下へ引っ張ります。首を更に締め付ける為ではなく、これは私の意思表示。ルーサーに「床に手を付け」という合図なのです。彼は私の意図を理解して、これまで一切曲げなかった膝を曲げ、四つん這いになる。私は鞭を束ねながら彼に近づき、横腹を強く蹴りつけました。か弱い私の一蹴りなんて、鍛えた彼には蚊ほども痛くはないでしょう。ですが彼はそのまま横に倒れ、仰向けになります。
「そういえば、羨ましそうに見てましたわね……こうして欲しかった?」
 私は鞭で首を絞め続けながら、チビにしたのと同じよう彼の肥大した陰茎を踏みつけます。私の足に収まるほどの大きさ。反り返りビクッと反応する陰茎は力強く、そのまま私を押し返しそうね。ですから私は前のめりに体重を掛け、陰茎を強く強く踏みつけます。
「あっ、ぐ……」
「あらあら苦しいの? 首が? コレが? それとも苦薬のせいかしら? 鞭の傷がまだ痛むのかしら? それなのにココはこんなに大きくして……気持ちいいんでしょう? 本当に、呆れてしまうほどの変態ねあなたは」
 変態を見下ろしながら、私は足をグイグイと踏み続ける。裸足で踏みつけているから、彼の熱さが直に足の裏から伝わってくる……脈打つ陰茎を感じながら、私の膣がキュンと締まるのを自覚しております。
「セ、イラ、さま……」
「なに、情け無い声出して……もしかしてもう出そうなの? 貴男確か三度目よね? なのにまた出すのね。鞭で興奮して、こんなに大きくしたチンコを踏まれて感じて、そんなことで出してしまうの。本当に変態ではないですか。こんなことで感じてしまうのに司祭だったなんてお笑いよね。いいわよ、出しなさい。貴男はローエを裏切った変態。こんなことで気持ち良くなる、こんなことで気持ち良くなりたい為にローエを裏切った変態ですものね! ほら、出してしまいなさい、ココ、ここから、ほら、こんなに踏まれて、気持ち良くなって、ほら、ほら!」
 ああ、気持ち良い……なじりながら陰茎を踏み続ける、この快感。人間だった時も感じておりましたが、眷属になってからは状況に酔えれば酔うほどに身体が快楽を感じてくれる。性的な生理現象がない代わりに、性的な行為そのものを楽しめばその分快楽になる……レイリー様、こんな身体にしてくださったこと、本当に本当に感謝しております。
「逝くのね? 踏まれながら逝くのね? 逝きなさい、自分の精液で自分を汚してしまうがいいわ。ほら、ほら、ほらぁ!」
 陰茎が強く跳ねる。私は直ぐさま足を退け、まるで噴水のように精液をまき散らす様をウットリと眺めます……ああステキ、なんで素晴らしい光景なのでしょう。心身共に鍛えられた屈強な男が、女に踏まれる悦楽に精液を振りまくほどに溺れる姿……フフッ、私としたことが軽く逝ってしまいましたわ。
「ルーサー、素敵でしたわ。貴男はこの私に傅き仕えてこそ、本当の快楽を知ることが出来る……そうでしょう?」
「もちろんです、セイラ様……あなた様に出会えた幸運に感謝します」
「フフッ、その幸運を導いたのは貴男が裏切ったローエですけれどね」
 自分の信徒を「寝取られた」気分はどうかしら? 女神様。もちろんその「苦悩」を気に入ってくださっていると信じておりますわよ?
「……セイラ様?」
 ゆっくりと腰を下ろし、私は四つん這いになってルーサーに近づく。私の行動を不審に思ったのか、ルーサーが声を掛けた。
「じっとしてなさい、ルーサー。苦痛ばかりが快楽ではない……それを教えてあげますわ」
 ルーサーが振りまいた精液。そのうち彼の身体に掛かった分を、私はまるでネコのように四つん這いのまま舐め取っていく。鞭による被虐調教とは真逆の、舌による奉仕調教。ヌメリとした舌と唾液でルーサーの肌を優しく刺激していきます。おそらくこのような性感、久しくルーサーは感じたことがなかったのでしょう……ピクッピクッと巨体を振るわせている姿が可愛いわね。
「気持ち良いかしら?」
「あの、はい。ですがこのような事は……」
「貴男はこれから、全ての快楽を受け入れなければなりませんよ? それが貴男に課せられる新たな教義ですから」
 舌で舐め、唇で甘噛みし、肌に吸い付いて赤い印を付ける。男にとって一番敏感な陰茎を無視しその周囲ばかり攻め続ける。もどかしいでしょうね。でもそのもどかしさも又、快楽の一つ。その証拠に……ほら、もう彼はご自慢の一物をむくりとそそり起たせているわ。
「どうやらちゃんと感じてくれているようね……嬉しいわ」
 性交時に優しく声を掛けられるのも久しくなかったはず。私の言葉に顔を真っ赤にしていますわ。私は主張する陰茎の先を人差し指で優しく撫で、そのままゆっくりとカリまでなぞり、くびれたそのカリの裏側を優しくさする。ビクン、と大きく陰茎が跳ねて、指が離れてしまった……その時見せたルーサーの顔ときたら……厳つい顔で可愛い表情をされると、たまりませんわね。
 私は微笑みながら、やんちゃな陰茎に顔を近づける。ちょん、と舌で亀頭を一舐めしてから、唇で優しく包み込む。そしてゆっくりと顔を上げ下げし、優しく、どこまでも優しく、陰茎を刺激していく。
「あ、ああ……あっ、く……」
 もう、可愛らしい声出しちゃって。まるで思春期の少年みたいな反応ね。子供がいてもおかしくないような男が見せる反応じゃないでしょうけど、だからこそ私の心を色々な感情がくすぐり心地好くしてくれます。
 ねっとりと舌を絡みつかせ、唇で抱擁。時折腰が跳ねるけれど、本当は腰を振りたくて仕方ないはず。それを我慢するなんて、強がりね。男の意地とでも言うのかしら? このまま口の中に出してあげても良いのですが……そろそろ、私も感じたいのです。膣で。
 唇を離し、ですが手は陰茎を握りしめたまま、私はゆっくりと腰を上げ体制を整える。彼の上へまたがるように。陰茎を持ち直しながら空いた片側の手で私の淫唇をパックリと開いて彼に見せ付ける。息を荒げながら、ジッと彼はひくつき蠢く淫唇、その奥にある膣を凝視しています。
「さあ、約束通り連れて行ってあげますわ……快楽の園へ」
 ゆっくりと腰を下ろす。ぐっしょりと濡れた私の膣は、ズブズブと彼の陰茎を優しく迎え入れる。ああ、やはり直接入れてこその快楽よね……気持ちで逝く私達ですが、肉欲がないわけではありません。感情とシンクロした肉欲は、人間のソレよりも貪欲。膣壁が陰茎を隙間無く包み込み、腰を動かさずともウネウネと刺激を与える。ゆっくりと腰を動かせば、ヒダが陰茎をつぶさに刺激し、腰を落とせば子宮口と鈴口による接吻。繰り返し繰り返し、膣内でバードキス。その度に身体を突き抜けるような痺れる性感。何度も何度も、繰り返す。ただ繰り返す。それが気持ちいい。とても気持ちいい。ああ、本当に……いい、とてもいいわぁ。鞭の技術も無く、罵声の言葉を選ぶこともなく、ただただ腰を振る。それだけがとても気持ち良い。シンプル、だからこそむさぼれる快楽。ここに行き着くまでにどれほど感情を高ぶらせられるか、鞭も言葉も結局はその為の小道具。ああ、いい。膣がキュンキュンと鳴き続けてますわ。
「どう、気持ちいい?」
「あ、は、はい……気持ちいい、です……」
「ふふ、気持ちいいのね。私も気持ちいいわ。ああ、いい、奥にまで届いて……ん、いい、いいわよ貴男……」
「あ、セイ、セイラ様……」
「いいのよ、遠慮しないで。もっと腰を振って、ほら、胸を揉んでもいいのよ? ああそう、そう、もっと、もっと激しく、あ、んっ! い、いいわ、そう、もっと強くても、あ、んっ! い、いいわ、気持ちいいわよルーサー、ん、あ、はんっ!」
「セイラ様、セイラ様……ああ、俺、私は、こん、こんな、快楽の、園、に、ああ、セイラ様、セイラ様!」
「ルーサー、これからよ、快楽の園は、ほら、すぐそこ、貴男も、あっ! い、もう、もうすぐ、いっ、ああ、くる、来てる、い、ああ、ルーサー、もっと、もっと激しく、あ、ん、あ、ああ、んぁあああああ!」
 互いの腰が強く強く押し込まれ密着する。四度目の射精、けれど最も価値ある射精が、子宮に向かって成されていく。それを助力するかのように、私の膣がキュッと陰茎を締め付け、一滴残らず吸い尽くそうと蠢きます。
「どう? 快楽の園は……気持ち良かったかしら?」
 髪をかき上げながら私はルーサーの顔に自分の顔を近づけながら尋ねます。熱く荒い息が、私の顔へ拭き掛かります。
「はい……セイラ様……気持ち、良かったです……」
 照れながら告白するルーサー。私はその答えに微笑み、更に顔を近づける。
「そう。これからも、快楽への探求は続きます……苦痛や苦悩だけでは得ることの出来ない快楽を求め、この私に献上なさい。頼みましたよ?」
「お任せを、セイラ様……全ての快楽はセイラ様の為に……」
 忠義、信仰、快楽、全てを捧げる信徒に、私は唇による祝福を授けます。
「……淫魔香も苦薬も既に効果を無くしているでしょうに。それでも私に全てを捧げるというのですね?」
 そう、もう淫魔香による魅了も効果はなく、ルーサーは何者にも惑わされてはいないはず。それでも彼は、忠義の言葉を覆すことはいたしません。
「もう後戻りは出来ません……いえ、出来たとしても、真の女神を前に後戻りをするはずもありません。セイラ様、これからも快楽へのお導きを……」
 淫魔香に魅了されずとも、彼は私という女神に魅了されているようですわね。まあ当然と言えば当然のことかしら。
「……あら、早速導いて欲しいのかしら?」
 いつの間にか、ルーサーの腰が又動き始めました。私はルーサーに唇を重ねながら、その動きに合わせていきます……。

「……予想通りだけど、これは酷いな」
 扉を開け、開口一番に飛び出した言葉。混沌とした拷問部屋を訪れてきたのは……。
「ああ、レイリー様。お待ちしておりましたわ」
 愛しの我が主が、わざわざ新たに「生まれ変わった」我らの教会に足を運んでくださいました。私は握っていた両手の陰茎を手放し、前後に刺さっていた陰茎を抜き取り、直ぐさまレイリー様の元へと駆けつけました。
「このようなはしたない格好で申し訳ありません」
「ま、いつもの格好って言えばそれまでだけどな」
 男達の精液にまみれた私を見ても、特に驚きもしないレイリー様。ちょっと……つまらないと申しましょうか、悔しいと申しましょうか……眉間にしわを寄せてしまいます。
「そんな顔をするな。まあそんな顔のお前も可愛いけどな」
 またそのような浮ついた言葉を……そんな事を言われたら、胸がキュンと高鳴ってしまいます。
「で……ココにいるのはローエ信者か?」
「はい。ここに残っていたローエ信者達に「回心」の機会を与えていたところです」
 私が忍び込んだ教会には、司祭達の他にも信者達がおりました。今ここにいるのは、残っていた信者達。皆、淫魔香によって魅了されている状態です。
「女性の信者もおりましたので、彼女達は直接レイリー様に「回心」していただけるよう「待機」させております」
 部屋の奥には、縛られたまま身をよじり悶絶している女達。残念ながらレイリー様を満足させられるだけの数はおりませんでしたが、用意できただけでも良かったですわ。
 回心と申しましても、その機会を得られるのはごく一部……ルーサーのように選ばれた者、そう、女神に見切りを付け新たな女神に見出された者だけが回心を許される。そうでない者は……私達の「糧」として全てを捧げて貰います。
「ん……まあ細かい話は後にして、とっとと片付けよう」
「仰せのままに」
 深々と一礼をし、私は男達の群れへ戻ります。
「……ちゃんと見ていてやるからな、セイラ」
「ありがとうございます、レイリー様」
 ああ、レイリー様が見ていてくださる……私の痴態を、男達に射精され続け汚されていく私を、見ていてくださる……ようやく、私はようやく「本格的に」感じることが出来そうです。
 ルーサーは美味しかった。これからも私に良い味を提供してくれるでしょう。ですが、彼は私にとって前菜でしかない。私の全てであるレイリー様を前にしては、全てが霞むのは当然のことです。
 これからが本番……私は「レイリー様に痴態を晒す」というプレイに、胸躍らせ小刻みに身体を震わせ、膣をべっとりと濡らし始めてしまいました。
「さあ……快楽の園へ、導いてあげますわ」
 この男達を快楽の園へ。そしてこの男達を小道具に、私はレイリー様の視線によって快楽の園へ旅立ちます。その後には直にレイリー様と……考えただけで逝ってしまいそう。
 ルーサーは私によって強引に回心させられ、しかし今彼はそんな状況を悦び幸福を得ました。私もレイリー様によって強引に眷属にされ、幸せを勝ち得た一人……あの時のレイリー様は、今私が感じているような「征服感」を感じていたのでしょうか?
「ああ、レイリー様、ん、チュパ、ん、チュ、ん、あっ、んっ! レイリー様、見ておられますか? ああ、もっと、もっと見てくださいませレイリー様、ん、チュ、あ、んぁあ!」
 直接私に絡む男達を無視し、私はひたすらレイリー様の名を口にする。ああレイリー様。私は貴男の眷属、永遠の愛を誓い全てを捧げたご主人様……もっと、もっと私を見てくださいませ、私を、私に悦びを!
「見ているぞセイラ……お前は美しいな」
 精液にまみれた私を見て、微笑んでくださる……ああ、私は幸せです。貴方に支配され、私は幸せです……レイリー様……。

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