第10話・後編

 ミネルバが闘技場で何かしでかすらしい……なにやら「兵隊」を集めているらしいことを知った俺達は、その企みを阻止しようと準備を進めてきた。
 いや……訂正しよう。ミネルバが何を企んでいるか、そのこと自体に興味はない。ただ俺は、彼女が欲しかった。麗しの聖騎士とまで呼ばれながらもブラックガードに堕ちた彼女を俺だけの眷属にしたい。そんな欲望が俺の原動力。彼女の企みを阻止するのは、その為の過程でしかない。そして……様々な過程を経て、今ようやくミネルバとの再会を果たした。
 ある意味、最悪の展開の中で。
 ミネルバは兵隊を集め、「疑似インスパイアド」という洗脳とサイキック能力の双方を植え付ける術を施していた。そこまでは突き止めたが、その兵隊をどうするかまで突き止めることは出来ないでいた。とはいえ、狙いが闘技場であり、また俺がミネルバに固執しているようにミネルバが俺の眷属の一人であるカサンドラに固執していることから、カサンドラが闘技場で試合をしているこのタイミングで投入してくるのは読めていた。そして読み通り洗脳済みの戦士達は闘技場に現れた。問題は、その戦士達が現れた手段にある。
 奈落の門(アビス・ゲート)。悪魔達の済む異界から開かれる門。奴らはその門を虚空に開け、そこから洗脳戦士と悪魔達を送り込んできた。むろんミネルバ本人も、そしてこの門や洗脳など全てを取り仕切ったであろう四つ腕の悪魔、ゲルガーを名乗るグラブレズゥも悠々とその姿をさらしている。
 この展開、全く読めていなかった……訳ではない。あり得るだろう可能性として、特にゲルガーの配下だったシーラや、ゲルガーにより疑似インスパイアドとなったエマが強く警戒していた。その為待機していた奴隷戦士達を直ぐさま戦場と化した闘技場に投入する手際は速かった。それでも「最悪の事態」を回避できただけで、状況は「最悪の展開」から幕開けたようなもんだ。
 特に酷いのが観客の混乱。デスナイトとして蘇りカサンドラと刃を交えていた「慈悲深き老将」ラウルスが、慈悲の欠片も見せぬ死と悪のオーラを解き放ち観客達を一気に震え上がらせパニックを引き起こさせた。加えて突然現れた戦士と悪魔の群れ……事の流れを理解している俺達はともかく、試合を観戦しに来ただけの観客達に平常心を保てと言う方が酷な話だ。恐れ戦き悲鳴を上げ、観客達は他人を押しのけ我先にとこの場から逃げだそうとする。だが当然、そんな混乱状態の者達が効率よく逃げ出せるはずがない。一気に人の波が押し寄せた出口は詰まり、余計に人々を逃げられなくしている。中には人の群れに登り壁を伝い外に出ようとする者もいるが……肥えた身体でそんなことが出来るはずもなく、踏まれた者達を巻き込み混乱に拍車を掛けるだけ。
 観客達の安否を気遣うつもりはないが……このままではこちらが不利だ。味方にした奴隷戦士達は闘技場の中で待機させていたが、試合会場や観客席にはいない。相手の洗脳戦士や悪魔達の相手をするためには闘技場の中から試合会場へ出なければならないが、観客達が邪魔でこちらへ出てこられない。更に闘技場の周辺も洗脳戦士達が取り囲んでいるらしく、逃れようとする観客達を更なる混乱のドツボへと押し込めているらしい。
「……行け」
 かつては愛らしく微笑んでいたであろう唇が冷淡な言葉を紡ぎ出す。黒騎士の麗しくも非常な言葉に、彼女の先兵達が動き出す。
「レイリー様……」
 緊迫した、しかしそれでも落ち着いた声が俺に届く。愛用の鞭を構えながら、セイラが俺の指示を待っている。それはアヤも、そして見えないところにいる眷属達も同じように俺の号令を待っているはずだ。
「……カサンドラはまずザコを片付けろ。セイラも続け。アヤは俺の周囲を、エマはギルドの者達を指揮して外の奴らを頼む。シーラは空からこちらに来い。それから他の者達は……」
『ん、あっ、ひふぅうう!』
『ん、あ、あん! ね、ほら、見なさい……ん、ふぁあ! ねえ、もっと、もっとみて、ね、んあぁあ!』
 俺の号令を待たずに始めてるか……ペンダントを通じ、エリス達の喘ぎ声がこちらに響く。
 観客席を見る。そこには混乱の最中で自慰を始めたエリスとアリス、淫乱親子の姿が見えた。ドレスを脱ぎかけ、スカートをたくし上げ、見せつけるように淫唇を指で弄りここまで聞こえそうなほど激しく湿った音を立てさせている。
『ねえ、ほらよく見てよ……こんなになってるの、ね、見たこと、ある? ん! あは、ね、よく見てよ、ホラ……ほら、ね、んぁあ!』
『ハァ、ん、フフッ、アリスったらそんなに……あぁ、ん! わ、私もこん、こんなに……ご覧に、なって、ね、い、淫乱、親子の、オナニー……ふぁあ! ん、オナニーショー……ん、ひぁ! み、見られて、かん、感じてるのよ、よ、ふぁああ!』
 恐怖に強張り青ざめていた観客達の顔が、上気し赤く染まっていく。エリス達の周囲から悲鳴がなりを潜め、代わりに熱い吐息が合唱を始めている。デスナイトのオーラを、淫魔の淫魔香が上回り始めている。一夜にして闘技場の奴隷戦士達を骨抜きにした淫魔香……死の恐怖をも上回る性欲か。エリスとエマの提案を聞いたとき、よもやここまで上手く行くとは思わなかったんだが……我が眷属達の力、侮りがたし。
 最悪のケース……ミネルバが瞬間移動などで大量の洗脳戦士を送り込んできた場合、観客達がパニックを起こし場が混沌に陥るだろう。そこまでは俺でも予測できた。そしてそうなった場合、いくらこちらが手駒を揃えたとしても思うように立ち回れなくなるだろう事も。そんなケースに陥った場合の対処法……それは眷属達が知恵を出し合い練っていた。
 まず闘技場の構造などをアヤとエマが検証し、あらゆるケースでの侵入方法を検討すると同時に、戦闘になった場合観客達がどうなるのか、避難経路なども含め検討した。その結果、単独での侵入はしやすいが集団での出入りは厳しいと判断。つまり敵が集団で突入することは難しいが、逆に観客が集団で避難することも難しいという結論を出した。そうなればパニックを起こすだろう観客達をどう沈めるのか、その検討に入る。そこでエリスが提案したのが、集団魅了……自分達の淫魔香を使って魅了し、一時的にでもパニックを抑えこちらの指示に従わせるという方法だった。エリスは既に昨夜奴隷戦士や闘技場の中にいた関係者達を全員巻き込んでの集団魅了を行っており、その高い効力を体験することで知り得ている。建物の外で淫魔香がどれほど効力を上げるか未知数だが、自分達や奴隷戦士達の邪魔にならないように道を空けるくらいは出来るだろうというのがエリスの計算。アヤもエマもエリスの策に同意したため、「非常手段の一つ」として選択肢に入れておくようにしたが……それがこうして効果を出すとはね。
 だがこれで全てが解決するわけではない。ミネルバの命に応じて洗脳戦士達が観客達を襲っている。それをカサンドラやセイラが防ごうと駆けつけている。観客達を助けてやることを優先しているのではなく、これはあくまで淫魔香の効果が観客達の悲鳴によってかき消されるのを防ぐためだ。そう、けして善意などではない。この俺が、眷属達が、善意で人を助けるはずがないだろう?
「させんぞ……まだ決着はついておらん」
「ケッ、だったら素直にあのままやられてろよジジイ!」
 死臭をまき散らしながら、腐りかけの老騎士がカサンドラの前に立ち塞がる。振り下ろされる大斧を長剣一本で防ごうと試みたようだが……弾くこともままならず、アッサリと刀身を折った。盾を失った騎士に、豪腕を止める手立てはない。
「二度死んどけ!」
 薪を割るように、純白の兜へ大斧の刃が垂直に振り下ろされる。腐った肉と骨が左右に散らかる。
「イーリスの四聖将も、堕ちちまっちゃ大したこと無いね……そうだろう? ミネルバ」
「……そうか、「力」を分け与えられているのか……」
 正直一番心配だったのは、カサンドラとラウルスの一騎打ち。観客達の目がある中でカサンドラが四聖将に数えられたラウルス相手に勝てるのか? むしろそれ「だけ」が心配だったんだ。だが俺から力を得たカサンドラは予想以上にその力を発揮し、一騎打ちで追い詰め、そして今この乱戦の中で打ち倒した。こうなれば後は……流れにさえ乗れば勝てる。流れに乗ることが出来れば……。
「その力があれば主に縛られる必要もないはず。呪縛を打ち破り自由になれるのにどうしてあの男に従う?」
「愛しているからさ。他に答えが必要かい? イーリスにいた頃だったら、これだけでも充分だと思うけどね」
 正義を重んじるハーニアスを信仰していた国、イーリス。正義と愛は別だが、しかしハーニアスの信仰ならば愛という言葉に美徳を感じていたはずだ。
「そんなまやかしを信じるほど、私はもう愚かではない……愛、友情、絆……信頼……そんな呪縛に捕らわれないのが、お前の「長所」だったはずだ」
「長所ね……よく言うぜ。私を信じろとかぬかしてたあんたがさ」
 二人の間にどんな関係があったのかは……詳しくは知らない。信仰を捨てブラックガードに身を堕としながらもカサンドラに固執するミネルバは、彼女に何を求めているのだろうか?
「茶番は終いにしろミネルバ。その女をどうするのも自由だが、やるべき事はやって貰おう」
 二対の腕を組み眺めていた悪魔が、地を振るわせるような重い言葉でけしかける。
「判っている……カサンドラ、まずはお前の「絆」を断ち切ってやろう」
 言うや否や、ミネルバは鞘から剣を抜く……デスナイト以上の禍々しいオーラが、漆黒の剣より立ちこめている。そしてミネルバはその剣を掲げながら……こっちに来た!
「主!」
 疾風怒濤。迫るミネルバ、突き出される漆黒の刃を、二本のシミターが防いでくれた。
「いつぞやのシャドーダンサーか……」
「戦略としては申し分ないがな、ブラックガード。そう簡単に主を倒せると思うな」
 カサンドラを含めた眷属達の要。ミネルバはまず俺を倒すことで戦局を有利にしようと試みた。それをまずアヤが防ぎ、そして直ぐさまカサンドラもこちらへ駆けつける。
「怖じ気づいたかミネルバ。私とやれ! 正々堂々があんたのやり口じゃなかったか?」
「そんなもので勝てるほど、戦は甘くない……散々知ったよ私は。あの戦場でね……」
 武神ハーニアスの正義を信仰していたイーリスが、大国ガルザックに大敗した5年前の戦争。聖騎士としてその戦に参加し敗れ、そして捕らわれたミネルバが見てきた「現実」がどのような「地獄」だったかは想像に難くない。いや想像するよりも過酷だったろう。自分の信念をこうもアッサリ否定するほどに聖騎士を堕とした現実なんて、想像できるはずもないか。
「レイリーと言ったか……半端な魔族がここまでやるとは思わなかった。だがお前の役目は終わり……私の下にカサンドラを連れてきた大役、ご苦労だったな。せめてもの褒美だ、我が剣にて始末してやろう」
「させるかよ!」
 背後から迫るカサンドラ。ミネルバは振り返ることなく大斧をかわし、そして俺目掛け漆黒の剣を振り下ろす。それをまた二本のシミターが受け止めた。
「どこで手に入れたのか知らぬが……良いシミターだ。カサンドラの斧もそうか……なるほど、ラウルスがああも簡単に倒れるはずだ」
「次は貴方の番ですよ、ミネルバ。主の前で跪け」
「その前に胴体切り離してやるぜミネルバぁ!」
 ……いや、それやられちゃうと本来の目的がだなカサンドラ……まあ本当に胴を切り離されるようなミネルバではないだろうが。
 カサンドラとアヤのコンビがミネルバに襲いかかる。それでもミネルバは怯まず、怪しげな漆黒の剣を振るい禍々しいオーラを振りまいている。二人がかりであるにもかかわらず、ミネルバには余裕すら見える。二人がかりなのにこちらが押されているだと?
 カサンドラとアヤのコンビネーションはバツグンだ。アヤが手数で相手を攻め立てながらカサンドラが強烈な一撃を狙う。そしてカサンドラの一撃を避けても受け止めても、アヤがその隙を狙い影を封じて動きを止めたり、あるいは影に潜り足下から襲ったりと、様々なバリエーションで敵を翻弄する……はずなのに。ミネルバはアヤの素早い猛攻を凌ぎカサンドラの一撃にも怯まず、そしてアヤの術も受け付けず、影に潜んだアヤを影ごとあの怪しげな剣で斬りつけていく。あの剣は次元を超えて攻撃できるのか? 影ごと斬られアヤが負傷するなんて……。
「いつまで遊んでいる、ミネルバ……まあ良い。こちらはこちらで楽しむとするか……カッカッカッ、どうした? よもやわざとやられ苦痛を楽しんでいるのではあるまいな?」
「くっ……」
 悪魔の声に反応し、視線をそちらへ移す……そこには傷だらけのセイラが悪魔の足下で横たわっている姿が……まずい、このままではセイラが……
「この、セイラから離れろ!」
 空から光の矢、シーラが上空から魔法で応戦している。
「うるさいのがまだいたか……おい、黙らせろ」
 自ら召還した元部下の淫魔に向け、ゲルガーは新たに召還した別の悪魔……巨大なハゲタカに似た悪魔に命じている。
「裏切り者が、よくも我らの前に出てこられるな」
「うっさいわね。私は愛に生きるのよ!」
「淫魔が戯れ言を……死ね!」
 身の丈があまりにも違う悪魔を相手に、シーラの苦戦は免れないか……くっ、彼女も心配だがセイラは……
「カッカッカッ、こうも飼い慣らすとは見事だが、さてどこまで耐えられる?」
 カサンドラが屈服させたミノタウロスやセイラ達によって魅了された奴隷戦士達がようやく到着し、セイラをかばいゲルガーの前に立ち塞がっている。だがヤツの言うとおり……彼らではあの悪魔に対抗しきれないだろう。ましてあのゲルガーによって操られている洗脳戦士だって周囲にいるんだ。そいつらの相手もしなければならないのに……セイラはシーラ達が稼いでくれた時間を使い自力で回復し起ち上がったが、一時しのぎに過ぎないぞこのままでは……
「主!」
 声に反応し視線を戻せば目の前に黒い刃が……
「くっ!」
 避けた、というよりも足がもつれ倒れた俺は、どうにかミネルバの一撃をかわせた。狙いはあくまでも俺か……ミネルバは二人の猛攻をかいくぐり俺に刃を向けてくるとは。カサンドラに力を与えた俺に、戦えるだけの力は残っていない。今避けられたのも奇跡に近いが……倒れた俺に襲いかかるミネルバの猛攻を再びかわせる力は俺にはもう無い……
 俺にはな
「ミネルバぁ!」
 勢いよく投げつけられる大斧。カサンドラのグレートアックスがブーメランアックスのように回転しながらミネルバに向かう。これまでに何人もの悪党から首を千切り飛ばした、カサンドラの大技。だがミネルバはそれを大きく身を屈めることで避けてしまう。駆けつけるアヤよりも早く姿勢を戻したミネルバは漆黒の剣を掲げ……
「えぇい!」
「なっ!」
 その姿勢で動きを止めた。俺は安堵と、そして「作戦」が無事成功した喜びに口元をつり上げた。
「影縛り……ようやく掛かったか。ティティ、お手柄だったぞ」
「へへっ、やっとご主人様の役に立てたよぉ」
 ミネルバが俺を襲う……そんなこと、この街に来る前から予測していたさ。だからその対策は前々から立てていた。何時何処で襲われても対処できる、危険な賭だが一発逆転を狙える作戦。更にミネルバを眷属にするため拘束できる、そんな作戦をな。
「その首輪はねぇ、すっごい魔具なんだよ。だから絶対にもう、動けないんだって」
「そう、その魔具のために私の術からは逃れられません……あなたは「私の領域」に足を踏み入れたのですからね」
 アヤの領域……それはすなわち、影。それも「俺の」影。アヤは俺の影と一体になっている為、俺の影は彼女自身でもある。だから俺の影がミネルバの影と重なる事はアヤが直にミネルバの影に術を施せる状態になり、こうして影縛りを成功させることが出来たわけだ。むろんこれだって失敗する可能性は高く……いやおそらく、ミネルバの高い精神力を考えればアヤだけで拘束させることは出来なかっただろう。
 だがこうしてミネルバを拘束できた。そのポイントは、ティティと彼女がミネルバに嵌めた首輪にある。
 ティティは直前まで、エマの指揮でミネルバ達の動向を探っていた。だがミネルバ達来襲の報を受け、彼女は真っ先に俺の元へと駆けつけてきた。小柄ですばしっこく、盗賊の軽業を身につけているティティは人混みも高い壁もものともせず、事前に調べておいた侵入経路を駆使して俺の元へ単身駆けつけた。そして気配を悟られぬようじっと俺の側で身を隠し待ち続けていた。ミネルバが俺に迫るその時まで。
 ティティがミネルバに嵌めた首輪は、もちろん師匠が作りだした強力な魔具。街を出る前に師匠から預かってきた「従属の首輪」という怪しげな物。効果はその名の通り相手を従属させる魔具なのだが、これ単体を嵌めただけでは効果はない。この魔具は従属効果のある魔法……チャームやギアスといった精神に関与する様々な効果を倍増させる拡張機のような物。この作戦で言えば、アヤの影縛りを手助けするための物だ。影縛りは影という別次元から影本人の精神を刺激し動きを止める術だから、魔具の効果はキッチリ働いてくれている。
 元々この作戦、街を出る前に立てられたものだったため、首輪を嵌める役割は俺自身になるはずだった。だが道中でティティを眷属にしたことで役割がティティに代わり、より作戦が確かなものになったのだが……そのティティを俺の下へ寄こしたのは他ならぬミネルバ。俺の側にいたティティの存在に気付けなかったことも含め、ミネルバは自分で自分の首に魔具を嵌める結果になったと言い換えられるかもしれないな。
「カサンドラ、こっちはもう良い。すぐにセイラを助けに行ってくれ! ティティも頼む」
「判った。だけど油断するなよレイリー」
「シーラも危ない! 急ごうカサンドラぁ!」
 動けぬミネルバを確認してから、二人はセイラと奴隷戦士達が苦戦する悪魔の下へと掛けだした。
「ここに来るまで、だいぶあんたには踊らされたが……ようやくこっちの術中にはまってくれたな、ミネルバ」
「……」
 俺は自分の影がミネルバの影から離れないよう気をつけながら、ゆっくりと起ち上がりミネルバの顔をのぞき込む。彼女は憎々しげに、俺を睨みつけていた。
「さて、色々聞きたいことはあるが……そんな暇はないな。話は俺の眷属になってからゆっくり聞くとしよう」
「……くっ」
 周囲は戦場。そんな中にあって、俺はこれから一人の女を犯そうとしている。ま、もとよりこの戦場は異様な状況下にあるが。
 エリスとアリス、そして駆けつけたフィーネとリーネによって淫魔香が漂い、多くの観客達を淫行に走らせている、そんな状況下を異常と呼ばずにどう表現する? 思考を桃色に染められた観客達は四人の眷属に群がるばかりでなく自分達だけでも盛り上がり初め、あちこちで乱交が行われている。更に不足がちな女手を魅了されている給仕達が補っている為、乱交はますますエスカレートし始めていた。そんな観客席に囲まれながらもどうにか植え付けられた異能力で平常心を保てている洗脳戦士と、元から魅了されているため淫魔香を嗅いでも問題のない奴隷戦士達が火花を散らし、俺の眷属達とゲルガー率いる悪魔達が死闘を繰り広げている。
 そしてこれから、俺達もその異常な戦場の中で異常な「決着」を付けようとしていた。
「まずはお前の美しい顔を見せて貰うか……」
 フルフェイスの兜で覆われていたミネルバの顔を、その兜を取り除くことで露わにした。とてもこんな禍々しい兜を被っていたとは思えない、整った顔立ちの美人がそこにいた。もっともその整った顔も怒りに満ちあふれ、眉をひそめ目つきは鋭く、そして歯を噛みしめ口元をつり上げ整いを崩しているのだが。
「ふむ、いいね。あの日、初めて会った日に僅かだけ見たあの時の顔をずっと覚えていたが、こうして怒りに満ちた顔もなかなかに美しいな」
「……下種が」
 悪魔に魂を売り渡した元聖騎士は、麗しかった顔を鬼のような形相に代え俺を睨みつけている。俺は聖騎士だった頃のミネルバを知らないから優しく柔和であっただろう笑顔を想像できないが、この顔が淫らに崩れ頬を上気させ、潤った唇から涎と喘ぎがあふれ出すのだと思うと……ククッ、たまらんな。
「さて、まず邪魔な物は取っ払おうか」
 威嚇するためにゴテゴテと尖った物がやたらに付いた黒いフルプレート。これをミネルバの影から俺の影を外さないよう気をつけながら全て脱がしていく。影をハッキリと地表に映し出すため、ミネルバは立たせたまま。この姿勢で全ての鎧を脱がせるのは苦労するが、それでもどうにか……レッグアーマーの部分を除いてどうにか脱がせる。そうして現れたのは、美しいプロポーションを保ちながらも引き締まった、たとえて言うならば……そう、カサンドラのように美しい身体。ただ彼女と比較するなら、ミネルバの方が細身で、胸があるかな。
「ほう、これは見事な……」
 一目見ただけではとてもこんな重いフルプレートを着ていたとは思えないが、直に身体を触れば納得できる。それだけしっかりと筋肉が付いているのだが、しかし女性特有の肌触り……すべすべした柔らかくも滑らかな肌質は損なっていない。なるほど、「麗しい」とはまさにこの事か。
「……なんだ、触られているだけで感じるのか?」
「この……」
 俺が腕を撫で回しているだけで、ミネルバの顔は怒りとは異なった感情で歪む。
「なるほど、お前は元々「素質」があるようだな」
「ちっ、ちが……この、首輪の……」
「んん? その魔具に「そんな」機能はなかったと思うがなぁ」
 精神に作用する魔具……影縛りやチャームといった術の作用を拡張する物だが、そもそもは「精神関与の向上」なので、他者から与えられる精神的な要素も拡張する効果がある。とはいえ「触覚」を拡張する物ではないから、感度が上がっているわけではない。上がっているのは、裸にされ露出した肌をいいように弄ばれているという「恥辱」という感情そのものだ。むろん俺に対する憎悪の感情も増幅しているはずだが、今はその憎悪よりも恥辱が勝り、更に恥辱が彼女の中で違う感情を呼び覚ましているのだろう。その感情が快楽なのかどうかは……少し微妙なところかもしれない。だが間違いなく、欲情し始めているのは確かなようだが……。
 今の俺はカサンドラに力を分け与えたために、それこそカサンドラと初めて会った頃くらいまで弱まっている。だからシーラから教わった「感情のコントロール」をミネルバに施すほどの力がない。本当なら俺に対し高まった憎悪を変換しメロメロにしてやりたいんだが……首輪の力があるとはいえ、さて今の俺にミネルバを眷属にして跪かせる事が出来るのか……まあやってみないことには始まらないな。
「戦場のまっただ中、周囲にこれだけの人がいてよくもまぁ欲情できるもんだな」
「き、きさ、ま……」
 侮辱しながら、俺はミネルバの身体を撫で回した。よく滑る肌は触っているだけでも心地好く、こうして弄ぶだけでも興奮してしまう。加えてミネルバの反応……憎悪を増しながらも恥辱にまみれ悦楽を感じているその表情が面白くて、ついつい無用になで続けてしまう。
 胸や太股はもちろん、鎖骨、首もと、脇、二の腕、へそ、膝裏……広範囲にわたりミネルバを撫で回す。
「ふむ……本当に戦士だったのか? これほどの肌触りはそうそう……汗でしっとりと濡れた肌もまた心地好いな」
「こっ、く……ふ、ふざけ、くっ!」
 む? 明らかに今感じたな? なるほど、本当に愛撫に弱いようだな。にしても愛撫に対する感度が良すぎる。先天的な素質だけではなさそうだが、まさか……
「そうかお前……この手の「拷問」を受けた経験があるな?」
「言うな!」
 動揺と憤怒。間違いなく図星……囚われの身になっていた間、この手の拷問を受けていたのだろう。それもこんなに感度が良くなるまで……拷問というよりは調教だな。
「こんなこと……こんなこ、と、くっ! わ、私は、く、屈しない、屈するもの……か……んっ!」
 人の身体はそれでも反応してしまう。強靱な精神を持つミネルバでも、人である以上身体の反応を抑えることは難しい。だが強固な精神があれば耐え抜き心を折ることもない。愛撫調教を受け続け敏感になりながらも、ミネルバは自我を保ち続け屈することなく耐え抜いたんだろうな。流石というか、凄まじいというか……だがもう、ミネルバにそんな我慢は必要ない。
「ミネルバ……素直に感じろ。これは拷問でも調教でもない。女としてのお前を悦ばせたい、ただそれだけの愛撫だ」
「ふざけ……んっ! わ、私を眷属に、するのなら、ひと、ひと思いに、やったらどう……んぁあ!」
「こうしてると俺も気持ち良いし、嬉しいんだよミネルバ。もっと感じてくれ。感じるお前の顔を見せてくれ」
「く、くだらん、貴様とて、ただの、お、男だ、ひぅ! 男だ、ろ……あ、あいつらと、同じ、な……あふぅあ!」
 あいつらか……どういう調教をされていたのか判らんが、下卑た男達に取り囲まれ、屈辱的な仕打ちを受け続けたのだろうな。それこそブラックガードに堕ちてしまうほどの憎悪を抱くようになるほどの……むろん彼女が堕ちた理由が調教のためとは思えないが、人を信じ続けた聖騎士が人に絶望するきっかけの一つになったのは間違いないだろう。だから彼女はこうも愛撫に嫌悪感を抱いている。だがその一方で調教された身体は悦んでいる……その悦びを素直に感じて欲しい。ソレを思うと……俺の中でミネルバに対する感情が変わってきた。俺はそれを自覚し、そして彼女に対する態度を改めるべきだと気付かされた。
「俺はな、ミネルバ。お前を手に入れるためにここまで来て、こんなドンパチまで起こしてるんだ。全てはお前のため……こうしているのも、お前のためなんだよミネルバ」
「こっ、まだ言う、か、んっ! 貴様は、私が欲しいんじゃ、ふぁ! くっ……欲しいのは、ブラックガードという、あく、悪女で、あろう、あっ、悪党、狩りの、れ、れいり、ひぅっ!」
「違うな。欲しいのはお前だミネルバ。ブラックガードであることなんてどうでも良い。俺はお前が欲しい。そしてお前に感じて欲しい。お前に幸せになって欲しい。お前の幸せは、凝り固まった復讐心を捨て去り俺と共に生きることだ」
 口説いている訳じゃない。これは本心だ。もっとも当初こそブラックガードを眷属にするという自己満足で欲した女だったが、今は違う。俺が欲しいのはミネルバという女。この女が俺は欲しい。
「ハァ、ん! く、口ばかりの、半端者が、くっ!」
「口ばかりかどうか、お前の身体に刻んでやるよ……俺の本気を。俺はお前に惚れてるんだぜ? ミネルバ。愛しているぞ……」
「ざ、戯れ言を! ん、ひぅ! こ、この、貴様というお……ん、チュ、クチュ……」
 ミネルバの唇を塞ぎながら、俺は彼女の肌をまさぐり続ける。最初こそ歯を食いしばり拒絶の姿勢を続けていたが、コリコリに硬くなった乳首を摘みながら弄ったときにたまらず喘ぎ、その隙に舌を入れた。そのまま歯を閉ざし俺の舌を噛み切ることも出来ただろうが、しかしミネルバはそうしなかった。うねる俺の舌を嫌ってか、首を振って抵抗しようとしたが、影縛りの効果で激しい抵抗が出来ない。それでも彼女は舌を引っ込め俺の舌が触れるのを極端に嫌う姿勢を見せていたが……
「クチュ、ん、チュ、チュパ……ん、くっ! この……」
「積極的になったか? ミネルバ」
「だっ、誰が……」
「嬉しいよミネルバ。もっと感じてくれ……」
「や、やめ……ん、チュ、チュプ、チュ、クチュ……」
 いつの間にか素直に舌を出し、俺の舌に絡ませてくる。調教されたが故にミネルバは無意識に身体が快楽を求めるようになってしまっているのか……そうだとしても、俺の愛撫を感じているのは確かで、それが素直に嬉しい。もっと感じさせてやりたい、そればかりを想い俺は愛撫を続けた。
「く、そ、ん、舐め、くっ!す、吸うな……ひぅ! きさま、くぅ!」
 唇から離れ、顎の裏を人なめしてから鎖骨、そして乳房に接吻。赤く俺の「本気」を転々と刻みながら、乳頭を口に含む。舌先で固く突起したソレを転がしながら、チュパチュパと技と音を立てるよう唇を動かす。手は引き締まりながらも丸みと柔らかさを残した尻と太股をまさぐり、ミネルバを悶えさせる。
「やっ! そ、そこは、や、やめ、くぁあ! ひ、ひぐぅ!」
 今まで以上に過激な反応を示すミネルバ。それは俺の手が彼女の尖った突起……左右にある二つの突起とはまた別の、とても敏感な陰核。そこに触れたときだった。
 もし俺がミネルバを担当した尋問官なら、当然ココも調教する。そして実際にミネルバはココを調教されたのだろう。過剰に反応するミネルバの顔がとても可愛くて、俺はついつい陰核を徹底的に嬲ってしまう。
「そ、それいじょ、んっ! や、やめろ、やめ、そ、そこ、や、いや、いやぁあ!」
 ビクッビクッと身体を震わせるミネルバ。そして手には温かな感触……
「そこまで感じてくれたんだ、ミネルバ」
「や、みるな、みないで、くれ……く、いや、いや……」
 愛撫で逝くと同時に、ミネルバは放尿していた。恥辱の極まりを目撃され、ミネルバは焼けるほどに顔を赤らめていた。
「……嬉しいよミネルバ。こんなに感じてくれて……可愛いよミネルバ。今のお前は可愛いよ……本当に愛おしい。ますます好きになったぞ」
「こ、この、こん、こんなわた、わたしを、晒させて、ハァ、ハァ……くっ! ま、まだ……」
「お前は俺のものだミネルバ。だからもっとお前を可愛い顔を、本当のお前を見せてくれよ」
「この、貴様という男は……ひっ! や、そ、そこ、だから、ダメ、くっ!」
 少しばかり塩気の増した陰核を、俺は口に含め丁寧に舌で転がす。突く度に舐める度に、ミネルバは戦士達がぶつかり合い上げる甲高い金属音や斬りつけられた戦士の上げる悲鳴にも負けぬような喘ぎ声を上げ続けた。
「や、ん、あぁあ! そ、そん、や、ん、ふぁあああ!」
 身体が何度も跳ねる。それでも俺は陰核を舌で攻め続けた。そうしながらも、手はふくよかな双丘を揉み、そしてその谷間へと指を進めていく。
「ダメ! そ、そこ、や、そこまで、い、イヤ! ん、あっ、くぁああ!」
 キュッと締まった菊門。そこを指で突くとミネルバはまた過剰に反応する。思った通り……ここも調教されていたか。快楽漬けになっているミネルバは言葉で否定しながらも閉ざした菊門を開き、俺の指を歓迎していた。
「いいんだよミネルバ……全部見せてくれ。そして全部受け入れてくれ。お前は俺のものだ。そしてお前は俺の下で幸せになるんだ。もう我慢する必要はない」
「ふざ、ふざけた、んっ! や、こん、こんなこと、で、ひぐぅ!」
「ミネルバ……愛しているぞ。本当にお前は可愛いな……好きだぞミネルバ」
「や、やめ、い、そんなこと、い、くぁああ! ん、な、も、もう、や、いゃああ!」
 指でアナルを弄り回しながら、俺は何度もミネルバに愛を囁いた。あまりにもいびつな愛ではあるが、しかしこれが俺の愛であり、そしてミネルバが必要とする愛になる。
「そろそろ……お前の「女」を貰うぞ。お前は俺によって女になる。俺のために女になる。そしてこれから先ずっと、俺の女だ……お前は俺の女だミネルバ」
 俺の予想が正しければ、ミネルバは……処女だ。聖騎士だった彼女を性的に尋問するのは、性に対し潔癖でなければならない聖騎士に対する拷問として最適だからという理由があっただろうが、しかし彼女が聖騎士であり続ける必要が捕らえたガルザック王国側にはあったはず。彼女の四聖将としてのカリスマを利用したかった王国としては、ミネルバの処女を奪うような調教は出来なかったハズ。また「麗しの聖騎士」の肌を傷つけるようなことも出来なかったから、被虐的な調教もしなかった。だからこそ尚更愛撫に敏感で陰核やアナルの開発が進められたのだろうと思っているんだが……。
 ずぶ濡れの淫唇に俺の肉棒がピタリと張り付く。そしてズブズブと肉棒は進み、そして何かが裂けるような引っかかりを感じた。一度そこで腰を止めると、僅かに二人の繋がりから赤色が滲み出る。
「これでお前は、女になったな」
 そこで一気に、俺は腰を付き入れた。
「ひぐっ!」
 そしてギュッと俺を締め付ける膣に構わず、激しく腰を振り始めた。
「俺の手でお前は女になった。そうだ、お前は女になったんだ。だからもう拒む必要はない。女になったお前は、俺をいくらでも感じていいんだぞ。もっと感じろ。快楽を、悦楽を、お前の全てをさらけ出し、全てを受け入れろ。お前は俺の女なのだからなミネルバ……愛してるぞミネルバ、ミネルバ……」
「ひ、ひぐ、ん、ひぁ、ん、あぁ! や、こ、こん、こんな、い、く、くぁ、ん、あぁあ!」
 立ち続けながら、戦場の中で腰を振り続ける二人。そう、いつの間にかミネルバも俺に合わせ腰を振っていた。影縛りの効果が切れたのか? いや、どうやら意図的に緩めているようだ。チラリと視界にアヤの姿が見えた。アヤは……微笑んでいた。自分の愛する主が他の女を抱き、他の女に愛を告げるのを目の当たりにしながらも、アヤは幸せそうに微笑んでいた。彼女には嫉妬心がない……なんてことはない。ただ彼女にとって主の幸せが己の幸せであり、それを愚直に素直に感じていてくれている……それだけなんだ。眷属だからなのか、俺の影だからなのか……本当のところは彼女にしか判らないのだろうが、少なくともあの笑顔は本物だ。あんな笑顔を、俺はずっとアヤにしていて欲しいし、そしてミネルバも……あんな笑顔を俺に見せて欲しい。
 その為にも、俺はこの女を自分のものにする。ミネルバを眷属にする。
 高まる快楽。せり上がる悦楽。もうじき、もうじきミネルバは俺のものに、俺の眷属になる。
「ひ、いや、こ、こん、こんな、い、いや、ん、ふぁ! ん、い、も、や、ん、あぁああ! き、きっ、きちゃ、ん! くる、くる! な、なに、こ、や、ん、ふぁ! ひ、ん、ひぅうう! ん、あ、や、ん、あ、あ、あ、ん、あぁ、ん、あぁあああああ!!」
 腰を押しつけるようにしながら動きを止め、俺達は強く強く抱きしめ合う。そして俺は首筋……は首輪でふさがっているために肩口に牙を立て、そして溢れる鮮血を飲み続け、白濁液を彼女の中へと流し込んでいく。
「かは、あ、あああ……」
 きつく俺を抱きしめていた腕の力が抜けていく。俺にもたれ掛かるミネルバを、俺はそのまま抱きしめ続けた。
「アヤ……そのままカサンドラ達の援護に向かってくれ」
「しかし主、まだ……」
「大丈夫だ。カサンドラ達ももう大丈夫そうだが、行ってやってくれ」
「はっ……」
 完全に術を解き、アヤは命じられるままカサンドラ達に加勢するため駆けだした。
「……これで、自分のものにしたつもりか貴様は……」
 まだ力こそ込められていないが、ミネルバが俺に問いかける。
「とりあえず……眷属にはしたつもりだ。お前は淫魔と吸血鬼の力を手に入れ、俺の眷属となった」
「だが……フフッ、どうやら従属化には失敗したようね」
 ゆっくりと身体を起こし、俺の抱擁を力なく振り解こうとする。俺は素直に腕を解き、ふらつきながらも自立しているミネルバを見つめ続けた。
「こんな小細工にしてやられるとは……詰めが甘かったか」
 ミネルバは自分の首にかけられた首輪を掴み、それを外し地面に投げ捨てた。
「お前が捨てた絆……俺達の絆をなめていたな」
「そのようだな……だが、お前も私をなめていた。こんなことで私を自分のものに出来るなどと思い上がったな」
 鋭い眼光がこちらに向けられる。だがもう、怯むことはない。その必要がない。
「ああそうだな……だがもう、お前は俺のものだ。違うか?」
「従属化には失敗している。私はお前に縛られてはいないぞ」
 そう、眷属には出来たがそれに伴うはずの従属心、それを彼女に植え付けることが出来なかった。やはり弱体化した俺では、魔具の力を借りてもミネルバの強靱な精神力に従属心を植え付けることが出来なかった。
 淫魔や吸血鬼の力で植え付けるような、そんな従属心はな。
「だがお前は俺の女だ。お前は俺に惚れている。お前はもう、俺無しでは生きられない女だ」
「勝手なことを……」
 ミネルバは俺を睨みつけながら、漆黒の剣を広い力強く握りしめた。そしてその剣を構えてみせる。
「決着、付けさせて貰うぞ」
 そう言ってミネルバは駆けだした。
 俺に背を向け、カサンドラ達の方へ……
「カサンドラ!」
「ミネルバ!?」
 突然かけられた声に、驚くカサンドラ。気にせずミネルバはカサンドラに向け勢いよく突っ込んでいく。
「天馬の陣!」
「ちょっ、いきなりそれかよ!」
 何の意味かは判らないが、カサンドラには伝わったのか……大斧を手放し、カサンドラは手を組んでミネルバを待ちかまえる。そしてミネルバはカサンドラの組んだ手に片足をかけ、そしてカサンドラはミネルバをそのまま放り投げるよう上空へ……
「いやぁあ!」
 まさに空を駆けるペガサスのように、ミネルバは空に舞い上がり上段からかつての相棒、悪魔ゲルカーを斬りつけた!
「ぐっ、み、ミネルバ……裏切る気か……」
「貴様には感謝している。私を陥れ、ここまで導いたのだからな。だからせめて、私の手で葬ってやろう」
 レッグアーマーと漆黒の剣、それだけを装備したほぼ全裸のブラックガードは、彼女をブラックガードに堕とした悪魔に刃を向け宣言した。
「所詮は人間か……よかろう、ここは退いてやる。いずれ、いずれ貴様らを破滅へと導いてやる。カッカッカッ! それまでせいぜい喘ぎあっていれば良かろう」
 現れたとき同様、四本腕の悪魔は冥界の門を出現させ、その中へと消えていった。ふぅ、これで……どうにか終わったか?
「カサンドラ、右手の雑兵を任せるぞ。私は左手に回る。シャドーダンサー、それからサキュバス、貴女らは私に、その他の同士諸君、君らはカサンドラの援護を」
「来て早々隊長面かよ……」
「カサンドラ! 今はそのような……」
「わーてるよ。ったく……ちっとも変わってねえな」
「貴方もね……さあ悪魔に操られし先兵どもよ、我が名と主君の名において、成敗してくれよう!」
 主君……ね。それがお前の答えって事で良いんかね? ミネルバ。
 彼女の真意はともかく、これで決着が付いたのは確かだ。ふぅ、ここまで長かったが……これからも大変だぞ。ゲルガーに洗脳された戦士達は瞬く間にその数を減らしているが、その周囲……観客席の乱痴気騒ぎは更に盛り上がっている。相手のいなくなった奴隷戦士達もその乱交に加わりだしてるし、おそらく後3分もすれば洗脳戦士達も全て片付き、カサンドラ達も乱交を始めるだろう。
「……で、外の方は終わったのか?」
 いつの間にか側にいた盗賊ギルドのマスターに、俺は問いかけた。
「はい。こちらももう終わるようですね。今闘技場の周囲にはうちの者達に結界を張らせておりますから、音が周囲に響くことはないと思われます」
「盗賊ギルドには魔法使いもいるのか……まあそりゃいるか」
 なんとも手際の良い配慮だこと。流石はギルドマスターというべきか、それとも……眷属として、こういった事態に早くも慣れた証なのか……どっちもか。
「では主……私達も……」
「だな。後始末は後で考えようか……」
 かなぁり大変なことになるのは判っているが、判っているからこそ今は放っておきたい。どのみち今収拾なんて付けられそうにないしなぁ。
 長い一日はまだ続く。俺は返り血を浴びながらも微笑みながら近づいてくる半裸の黒騎士を見つめながら、異能の力を得た眷属の唇を楽しみ始めていた。

 色々と整理をしよう。まずはそれからだ。そうでなければ頭がごちゃごちゃしていてまとまらない。
 まずミネルバが狙っていた「破滅」だ。これは俺が思っていた以上に緻密で、良くできた作戦だった。
 まず舞台を闘技場にした理由。これはまず俺達を誘いやすく、またカサンドラを孤立させるきっかけが作りやすい場所として選んだようだが、しかしどちらかといえばコレは後付の理由。狙いはやはりガルザック王国の破滅であり、その為に狙ったのが闘技場のある金色の7番街だった。
 この街は合法非合法関わらず、様々な「金」が集う街。言い換えれば王国にとって大きな財源であり、そして流通の要でもある。表だって認められないような商売もココではまかり通っているのは、その方が王国として都合が良いから……そういう理由がある。だからこの街を抑えられると、王国にとっては大惨事になりかねない。それだけに、他国もこの街を侵略しようと常に狙っており、5年前も……イーリスが狙っていた。イーリスは「悪の根元」とこの街を名指しして非難していたが、実際はこの街の富を狙っていたのではないかと囁かれていたらしいけど……その当たりはもう興味ない。
 そんな重要拠点を破滅させれば、王国は混乱し、他国の侵略も今よりは容易になりやすくなる。実際に侵略されるかどうかはさておき、戦争が起きやすい状態にはなりそうで……王国の破滅を進めるにはうってつけなのだ。そこでミネルバはどのようにして街を破滅させるのかを考え、今回の作戦を思いついた。
 まず、この街は大きな3つの「権力」と4つの「商売」で成り立っている。権力の3つとは、この街に集う商人達、商人達と組んで儲けている富豪達、そして裏で商人達と取引する盗賊ギルド。商売の4つとは、非合法も含めた小売業、闘技場を含めた賭博、娼婦館などの風俗業、そして奴隷や傭兵といった人材業。どの商売にも3つの権力が何らかの形で関わっており、そのバランスを保ちながらそれぞれが上手いこと儲けていた。そして儲ければ儲けるほどその権力は増していき、今では王国が制御できないほどにふくれあがっている。だからこの街が王国の支配から逃れ独立するのではなんていう噂もまことしやかに流れていたのだが、それをミネルバは利用しようとした。
 まず盗賊ギルドを密に私物化し、裏で操ろうとした。そして闘技場で誰もが注目しそうな大会を催して商人や貴族連中を出来る限り集め、そいつらを一気に殲滅、あるいは洗脳しようと企んでいた。強引にカサンドラをラウルスと対戦させようとしたこと、そしてそうさせるまで派手にアピールをしたことは、全て多くの富豪や商人達を闘技場に集めるためだった。またその一方でローエ教団と手を組んだのは、闘技場に冥界の門を開かせるためだったらしい。闘技場の管理にはローエ教団も関わっており、彼らに無断で冥府の門を開けるようなことは出来ない。異教徒の好きにさせるはずがないのだ。そこでミネルバ達はローエ教団に「大勢の人が苦しむ結果」を約束し、闘技場での騒ぎに関与しないよう求めた。そして教団はその話に乗った、ということのようだ。今思えば、ベイリンチ卿が私財の全てをなげうってでもカサンドラを参戦させたのは、ミネルバという脅威のことばかりでなく、私財を失うという「苦しみ」を味わうためだったのだろうか? まあこの説は無いと、セリーナは言っていたがな……あいつは名ばかりの教徒で、相手を苦しめることだけが好きなサドなんだそうだが……俺から見たら……まあいいかこの話は。
 さて、ミネルバの作戦……その結果はどうなっだたろう?
 まず盗賊ギルド。これはギルドマスターであるエマを疑似インスパイアド化するという方法で成功しかけたが、俺によってエマが眷属になり失敗。だがギルドの方はさして重要視していなかったらしく、また俺によって奪い返されることも想定していたらしいから問題なかったらしい。ギルドを活用するのは俺達が街に着くまでの動向を探らせることと、闘技場での作戦を整える準備さえ出来れば良かったと思っていたのだとか。
 そして肝心の闘技場。こちらは流石に想定外というか、ある程度奴隷戦士を眷属にしたりとかすると思っていたらしいが、ミネルバが考えるよりもこちらの行った「規模」が違いすぎた、らしい。まぁまるごと魅了するとはなぁ……俺もそんなこと出来るとは思わなかったし。ただやはりそれでも大事なのは商人と富豪を集めることで、そいつらを皆殺しに出来れば「破滅」という行為については成功するから、仮に俺達の邪魔が入っても成功するだろうと思っていたようなんだけど……これもまさか、混乱を淫行で沈められるなんて思わなかったらしい。うん、そりゃそうだよな。
 でまあ、結果としてミネルバと悪魔ゲルガーの破滅行為は全て防がれた。だが大きな問題が残った。破滅こそしなかったが、あの場に観客として居合わせていた商人や富豪、その他一般の人々……彼らとの酒池肉林。その結果が生み出した問題なんだよ。
「ご報告いたします。商人ギルドの再結成、および富豪達によるサロンの結成、滞りなく完了いたしました」
 エリスが満面の笑みを浮かべながら、報告を続けてくれる。
「予定通り双方の代表は私が務め、商人、富豪双方をまとめていきます。その際に派生する「褒美」などは順次考慮していく予定ですが、こちらも問題なく進められると思います」
 ま、つまりだ……あの場にいた連中は、一人漏れることなく「魅了」してしまったと……つまり奴隷戦士達同様、商人達も富豪達も、エリス達の言いなり……実質上「支配」してしまったと。
 これで盗賊ギルドに加えて商人、富豪も抑え……この街の「3つの権力」が俺の元で一つにまとまってしまった……つまりだ……
「おめでとうございます。これでご主人様がこの街の支配者となりました」
 ってことなんだ……いや、いいのか? 本当に良いのかこんな事……
「まだ迷っていらっしゃいますか? ご主人様」
「だってさ……俺は別にこの街を手に入れたかった訳じゃなくて、ミネルバを手に入れられればそれで良かったわけでさ……」
 そうなんだよ。まさかこんな事になるなんてこれっぽっちも思わなかったし、ただミネルバを手に入れることだけを考えていたらいつの間にか……本当に良いのか?
「私達がこうして穏便に暮らすためです。あれだけ派手に魅了してしまった以上、魅了が解けてからのことを考えるとこうするのが最適な方法なのです」
「判ってるけどさ……」
 魅了された者達が目を覚ました場合……当然、騒ぎになる。そうなれば黒の0番街に帰ったとしてもその騒ぎは国中に広がり、あの街でも過ごせなくなるだろう。そうならないためにも、予防策を張る……それが各組織の再結成とその支配、になる。
 魅了は魅了し続ければ溶けることはないが、あの場にいた全員にソレを続けるのは無理がある。絶対に誰かの魅了は溶けるが、そうなっても騒ぎを起こさせないようにするにはどうすれば良いか? 騒がないよう一人一人に納得させることが大事なのだとエリスは言う。その為には商人と富豪それぞれの権力をまとめ、こちらで組織をコントロールし、定期的に魅了……つまり乱交を開いたり「褒美」「報酬」といった名目で眷属達が相手をする。そうやってとりあえずトップ連中を魅了し続ければ、仮にその部下となる者達が魅了から覚めても騒がないよう組織の力で押さえつけることも出来る。またそういった部下にも何らかの褒美……眷属でなくとも女をあてがうことで満足させ納得させることも出来る。あの乱交を経験した者ならば、魅了が溶けても身体が快楽を求めるのは間違いないだろうから、よほどのことがなければそれで納得するだろうというのがシーラの意見だ。
 またコレと似たようなことも、盗賊ギルドや闘技場でも行っていく予定。このように広範囲で街の支配力を強め維持し続けることが、俺達の安静に繋がると……まあ理解はしているんだがなぁ、いいのかねぇこんなこと……
「街を性欲で支配する。ご主人様にこそ相応しいではありませんか」
 どうなんだろうね……まあ淫魔であり吸血鬼である俺には……似合うのかなぁ。
「もっと自信を持ってください。私達のご主人様なんですから」
「……慣れれば自信も付くかな?」
「ええ。私達のご主人様ですから、問題ありません」
 ま、他にもう選択の余地はないし、動き出してしまったからこれで良いのかな……
「なあミネルバ……これはある意味、この街の「破滅」とは思わないか?」
「……下らない。こんな事で支配とか破滅とか……馬鹿げている」
 ごもっとも。だったら……
「なんなら、お前のためにお前の望み……この街の破滅、叶えてやっても良いんだぞ?」
 馬鹿げているというなら、それもありだろう。さてミネルバの答えは……
「……だから馬鹿げていると言っているだろう、破滅など……もう望みもしてはいない」
 そう言いながら、ミネルバは止まり掛けた「手」を動かし始めた。
「私の望みは……この「幸せ」を守り通すこと。その為にも主君よ……ん、ハァ、もう、もうそろそろ……」
 ミネルバの片手は俺の肉棒に、もう片方は自らの陰核と淫唇に。手の動きは速くなり、ミネルバの息もますます荒くなっていく。
「そう言えばさ……俺には縛られないとか、そんなこと言ってなかったっけ?」
「な、なにもこんな時に……ん、あっ!」
「物忘れが激しくてさ、最近……ミネルバ、お前はどうしたいんだっけ?」
「なん、何度でも誓う……誓うから……もう、ん!」
 懇願するミネルバに許可を出してやると、彼女は飛びつくように俺の上に跨り自ら腰を下ろして俺の肉棒を、彼女曰く「主君専用」の膣へと導いていく。そして大きく喘ぎながら身を震わせた後、腰を跳ねさせながら彼女は誓った。
「わ、私、ミネルバ、は、き、貴公を主君と、し、慕い、この、身も、心も、た、魂も、んぁあ! すべ、全てを、さ、捧げる、こと、ちか、ちかいま、す、んぁあ! わ、私、は、誰にも、縛、られ、ない、ん! け、けれど、あ、い、ふぁ! ん……みず、自ら、あい、愛する、主君に、全てをささ、捧げ、はぁん! ん、ああ、主君の、す、すべてを、うけ、受け入れ、ん、あぁ! この、この身と、心と、たま、魂の、よ、悦びと、し、します、ん、あぁ、だ、だから、ん、あ、いい、ふぁ! き、きもち、いい、いい! しゅ、主君、の、す、全てが、い、きも、きもち、いい、いいんです! あい、あいして、ま、す、あ、い、あぁああ!」
 幸せと悦び。ブラックガードへと堕落しながらも、彼女は快楽に堕落することで笑顔を取り戻した。これがけして光当たる場所に戻ったことにはならないが、それでも彼女は幸せだ。そうであるよう、俺がしっかりと導く。
「ったく、ちょっと前までは私に熱あげてたんじゃなかったのか?」
「あ、ん、ご、ごめんなさい、かさ、カサンドラ、ん、あぁ! や、だ、だって、しゅ、主君は、わた、わたしたちの、ん、あぁ!」
「ご主人様だもんな……誰よりも愛すべきご主人様だもんな。判ってるよ。私だってレイリーが一番だから」
「だけ、だけと、あ、あなたも、す、すき、すきなの、カサン、ドラ、んぁ!」
「私も好きだよミネルバ……堕ちたアンタはほんっと、可愛いぜ……」
「あ、ん! そ、そこ、カサンドラ、も、もっと、む、むね、もん、や、んぁあ!」
 背後からカサンドラに両胸を揉まれながら、ミネルバは跳ね続けた。
 そういやこの二人の関係……ミネルバがどうしてカサンドラに固執していたか。その答えはミネルバから聞くことが出来た。
 ミネルバは若い頃から献身的な信仰と高い身体能力、そしてめきめきと腕を上げる剣術に注目が集まっていたらしく、「麗しの聖騎士」の二つ名は四聖将に名を連ねる前から付けられていたらしい。それは彼女にとって誇れる勲章であったが、同時に誰からも特別扱いを受ける敷居にもなっていた。彼女は誰に対しても優しく接し誰からも慕われていたが、そんな中だからこそ孤独を感じていたらしい。そんな彼女にづけづけと近づいた者が一人いた。それがカサンドラだった。
 カサンドラは元々権力というものが嫌いで、神への信仰も嫌っていた。ミネルバにその気はなかったが、カサンドラから見れば権力もあり信心深い彼女は「鼻につく」存在だったらしく、意味もなく突っかかっていたらしい。だがミネルバにはそんなカサンドラの行為が「対等の立場に見てくれる人」のそれに感じ、嬉しかったらしい。ようやく自分を「人」として扱ってくれる者が現れたと。だからミネルバは自分を「人」として扱うカサンドラに好意を寄せ、またカサンドラもミネルバが権力をかざしたり信仰を押しつけたりすような者ではないと知り好意を寄せた。ミネルバがカサンドラを聖騎士団に招いたのは戦局的なこともあるが、唯一の「親友」を側に置いておきたい、そういう気持ちがあったからだったようだ。カサンドラに「抱かせろ」と迫られたときには、断りながらもかなり心は揺らぎ、信仰すら揺らぎかけていたとは今だから言える話か。
 そしてミネルバ達の国イーリスは戦争に敗れ、二人はそれぞれ囚われの身に。ブラックガードに身を堕としたミネルバは、思わぬ形で再会したカサンドラを強く求めるようになった……それはブラックガードになった自分でも、まだ「人」として接してくれるのではないか、こんな自分でもまだ「抱かせろ」と言ってくれるのではないか……そんな期待があったから。しかしカサンドラは俺の眷属になっており、全ては俺に捧げていると、そう本人から告白され……だったら洗脳してでも手元に残したい。そして自分からカサンドラを奪った俺に破滅を……そう願いはじめた。今回の一連の騒動が妙に回りくどかったり挑発的だったりしたのは、街の破滅の他にカサンドラを手に入れること、その際に俺への復讐をも果たすことを考えていたかららしいが……その結果が、こうなっている。
「し、しあわせ、しあわせです、しゅく、ん、ごしゅ、ごしゅじん、さま、い、あ、きも、きもち、い、いい! ふあ、ん、か、カサンドラ、ん、あ、チュ、クチュ……ん、チュ」
「チュ、クチュ……ん、ミネルバ……一緒にさ、レイリーの、ご主人様の下で幸せになろうぜ。気持ち良くさ、ん、チュ……」
「チュ、ん、クチュ、チュパ……ん、あ、、ふぁ! ん、も、もち、もちろん、し、しあわせ、しあわせに、な、なる、ん、あぁあ! きも、きもち、よく、な、なっ、て、ん! ご、ごしゅ、ごしゅじん、さ、ごしゅじん、さま、も、き、きもち、いい、いい、です、か、ん、あぁあ!」
「あ、最高に……ん、気持ち良いぞミネルバ……」
「よ、よか、ん、あぁ、ふあ! も、もう、い、いく、い、いく、い、い、いって、い、いい、いい、いい、です、か、ん、あぁ!」
「逝け。俺ももうじき……」
「あ、い、いく、ご、ごしゅじん、さま、と、い、いっしょ、い、いっしょ、いっしょ、に、い、いく、いく、いく、いっ、い、い、くっ! あ、あぁああああ!」
 カサンドラに支えられながら、ミネルバが大きく背を反らす。ドクドクと俺の白濁液がミネルバに注がれ、ピクピクと膣は震えながら俺の肉棒を締め付けた。
「……さて、幸せ噛みしめたところでミネルバ、代われよ」
「……まだ、まだよ……幸せの余韻が……」
「だぁ! いいから代われ! さっきからお前達を見てたから濡れちまって、もう我慢できないんだよ!」
 カサンドラは強引にミネルバを担ぎ、俺から引きはがした。そして射精したばかりで萎えてしまっている俺の肉棒の上に跨り……
「いただきっ!」
「あ、てめぇティティ!」
「ん、チュ、ん……だって、まだご主人様の元気じゃないのに……カサンドラ強引すぎ」
「それに次は……私の番だカサンドラ。ティティも控えて欲しいものだ」
「あれ、そうだっけアヤ」
「手が早いのはあなたの長所だが……ん、チュ、クチュ……横取りは許さないよ」
「ほらカサンドラ。とりあえずこっちにいらっしゃい。ん、ほら……フィーネがあなたに叩いて欲しいって」
「や、ん! セイラさん……こんなところに蝋を、んぁあ! も、もっと、こ、こっちにも……」
「お姉ちゃんエロすぎるよぉ……ん、ふぁ! ちょ、アリスちゃん、そこ、ん!」
「リーネもエロすぎ。お尻こんなに赤くしてるのに欲しがって……ここ? ここにもっと欲しい?」
「そ、そこ、ひぁ! ん、いい、いいよぉ……あ、シーラさんそれ……」
「どう? 淫魔特製のフタナリチンポよ。どう、嵌めて欲しい?」
「いいなぁ……嵌めて欲しいけど……」
「ん、クチュ、ん……ダメ、これ私の。ね、早く入れてよシーラぁ」
「ちゃんと我慢できたら、でしょ? セリーナ。ほらぁ、ご主人様にオシッコ我慢してる姿を見て貰わないと」
「あ、ん、ご、ご主人様……み、見て下さい、お、オシッコ、が、がま、ん、ダメ! も、もう、む、ん、あぁああ!」
「あらあら……はしたないわね。そんなに堪え性がなかったかしら? セリーナは」
「違うわよ、エリス。あの娘はご主人様に見て欲しかったの。オシッコをするところをね」
「あら? それこそはしたないわね……エマ、あなたがちゃんと躾けてあげれば?」
「それも良いわね……ふふ、どんなお仕置きが良いかしら?」
 ったく……相変わらずだなこいつらは。だがこれが……俺達か。
「どうだ? ミネルバ。こんな連中に囲まれて」
 カサンドラから強引に剥がされたミネルバが、それでも横たわりながら余韻を楽しんでいた。
「はい……とても幸せです。こんな幸せがあるなんて……私は絶対に、この幸せを守っていきます」
 悦楽と幸福にまみれた笑顔を、ミネルバは惜しげ無く俺に向けていた。

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