第4話

 突然主が替わった、妖しげな屋敷がある。その妖しげな屋敷には、雰囲気に似つかわしく地下室がある。酒蔵? 確かにそのような部屋はあるが、ここにはもう一つ、地下室がある。
「ああ……ハァ、ハァ……」
 地下室からは少女の荒い息遣い。それと共に、鳴り響くは鞭の音。
「ほら、この程度で根を上げるの? まだ始まったばかりでなくて?」
「も、申し訳あ、んっ! ハァ、くぁあ! ん……いぁあ!」
 しなやかに弧を描き、鞭は縛られた少女の柔肌に当たる。肌は赤く色付き腫れ上がり、既に幾本も刻まれていた赤い線の上に新たな線を刻んでいた。
「どう? 少しは良くなってきたのではなくて?」
「まだ、痛いですけ、んっ!」
「痛い? 痛いけど何?」
「ハァ、よく、わからなく、うぅんぁあ!」
「判らない? 気持ち良いのではなくて?」
「は、ハイ、ハァ……き、気持ち良いで、すぅう!」
 強引に気持ち良いと応えされる、鞭の衝撃。だが少女の言葉が全くの偽りとは言い難い。
「そう……でも気持ちいいのは、この鞭? それとも、刺さっているバイブ?」
「あの……」
「ふふ、いいわ。見れば判るもの……本当にいやらしい娘ね。椅子がずぶ濡れじゃない……なんでそんなに濡れているのかしら?」
「それは……いやらしい私が、ハァ、あ、愛液と、その……」
「その、なに?」
「くぁああ! ん、ハァ……お、オシッコを……」
「オシッコ? オシッコですって……なんてはしたない。あなたは鞭で打たれて粗相をしてしまったのですか?」
「は、はい……そうです……私は、鞭で打たれて、おっ、オシッコを……して、しまいました……」
 強制的に自分の痴態を白状され、少女は恥ずかしさから顔を赤くする……だがその顔は、どこか恍惚としたものがあった。
 それもそうだろう……少女の半分は淫魔なのだから。俺の眷属となった、吸血鬼と淫魔のハーフなのだからな。
「随分嬉しそうだな、セイラ」
「ええ……ふふ、こんなに虐めがいのある可愛らしい娘もそういませんから……フィーネも嬉しいわよね?」
「はい……もちろんです」
 フィーネと呼ばれた少女は、質問に答えた。むろん脅され強制された……わけではない。彼女は心底、マゾに調教されるこの過程を愉しんでいる。
「ウブな村娘が、変われば変わるものだな」
「はい……ご主人様の眷属になって、フィーネは本当に幸せです……」
 痛みの余韻に息を荒げながら、少女は腰をくねらせながら応える。椅子に縛られ、バイブを入れられ、鞭を打たれ、それにも飽きたらず自ら腰を動かすか……入れられているバイブなんて、師匠が作った魔力で動く特製品だというのにだ。何処までもいやらしい娘だ……本当に愛おしいよ。
「いかかでしょうか、ご主人様。あなた様の卑しい眷属に、褒美を与えては」
 飴と鞭、とはよく言ったものだ。かなり手加減しているとはいえ、鞭の乙女セイラが放つ鞭責めに耐えているのだ。鞭の次に飴を与えてやる頃だろう。もっとも、すでにフィーネはバイブという飴を得ているわけだが……。
「それも良いだろう。フィーネ、セイラの優しさに感謝するんだな」
「はい……セイラお姉様、ありがとうございます」
 品良く礼を述べてはいるが、しかし腰は待ちきれないと動きっぱなしだ。まったく、そろそろこっちの方も躾けないとな。俺は椅子から解放したフィーナを跪かせながら、自らベルトに手を掛けズボンを下ろす。
「ああ……ご主人様、ご褒美、ありがたく頂戴いたします」
 口上を述べ、フィーネは後ろ手に縛られたまま俺の肉棒を口に含む。そして舌を絡ませ丁寧に肉棒を舐め上げる。
「ん、クチュ、ん……チュ、チュク、ん、美味しい……チュ、クチュ、クチュ……」
 幸せそうな顔をしてフェラをする村娘。初体験の直後から淫乱になった村娘は、最高級の御馳走を口に含みご満悦だ。だがその顔も、突然苦痛に歪む。
「どうしたの? ご褒美を頂いているのに口を休めるとはなんと無礼な……」
「も、もうひわけ……んっ! ん、クチュ、クチュ……くふっ! ん、チュ、チュパ……ふぅんん!」
 俺のを奉仕しながら、フィーネはセイラから愛の鞭を受けている。背中からは痛み、口からは褒美、膣からは快楽……様々な悦楽がフィーネを攻め上げている。
「ん、くん! チュ、クチュ、チュパ……んんっ! ん、くは……ん、んっ!」
 頭を前後させ、肉棒への刺激を強めるフィーネ。そろそろ逝くのだろう……それまでに俺を導こうと必死だ。必死に悦楽を愉しみ耐えている。
「いいぞフィーネ……そろそろ……」
「はっ、はひ、ん、クチュ、チュ、チュパ、チュパ、ん、ん、チュ、ん、ふぁ、ん、クチュ、チュプ、チュ……んっ! ん……んくぁあああああ!」
 俺が逝くまで手を休め、俺が出したのを見計らって精一杯鞭を振り下ろしたセイラ。タイミングは完璧だ。フィーネは俺の射精を口いっぱいに受け止めながら、鞭の一振りと共に絶頂を迎えていた。
「まったく、だらしない……折角ご主人様がくださった精液を垂らすなんて……ん、チュ、チュク……」
「はふ、せ、セイラ、おねえひゃ……ん、チュ、チュパ……」
 ツカツカと歩み寄ったセイラはフィーネの口元から垂れる精液を舐め取り、そのまま唇を重ね互いの舌で俺の精液をネチネチと弄んでいる。官能的なシーンに思わず見とれ、下を向いていた愚息が上向きになっていく。
「なあ……そろそろコッチも構って欲しいんだけどな」
 離れたところから声がする。自ら胸を揉み、足を広げ陰部を幼い少女に舐めさせているカサンドラだ。むろん彼女の陰部を舐めている少女とは、リーネのことだ。
「悪いな……ほう、だいぶ手慣れてきたんじゃないか?」
 カサンドラの方へ歩み寄りながら、俺はリーネを見下ろした。小さな舌でチロチロと陰核を嘗め回しながら、自分の膣に入ったバイブに手を当てグリグリと回している。バイブはこちらのも魔力で振動する特性の物なのだが、その振動では足りないのか、リーネは腰までくねらせながら手を動かしていた。
「ああ、見ての通りだぜ……こりゃ、淫魔の血だけじゃないぜ? 俺達の仲間になる前から、かなりエロかったんじゃねぇの?」
「どうなんだ? リーネ」
 俺の問いかけに、リーネは上気した顔を僅かに上げ応える。
「……うん、リーネは前から、エッチな娘でした……いつもオナニーして、いけないことばかり想像してましたぁ」
 本当かどうかは判らない。だがこう応えることが、主を、先輩を、そして自分をも愉しませるのだとこの少女は心得ている。塗り替えられた本能が、少女に淫猥な言葉を語らせるのだ。
「だから胸もこんなに大きくなって……ん、ここも、こんなに濡らしちゃうの……」
 床に付いた胸を擦り、腰を振り、垂れる愛液を周囲に振りまく少女。この痴態を見れば、誰でも少女の言葉を信じてしまうだろう。
「エロガキだな……なぁご主人様、これはお仕置きが必要じゃないか?」
「もちろんだ。躾がなってない娘にはお仕置きが必要だ」
 カサンドラは俺と目が合い、ニヤリと口元を歪める。それは俺も同様だ。ある種の予定調和ではあるが、こういった芝居も、夜を愉しむためには必要な儀式だ。
「お前はそのまま続けてろ……カサンドラ」
 リーネにはカサンドラの陰部を舐める作業を続けさせながら、俺はカサンドラの口元に肉棒を近づけさせた。
「ん、クチュ、チュ……」
 カサンドラは慣れたもので、手を床に付きながらも器用に肉棒を口内に含み、唾液をたっぷり塗りつけるように舌を絡めさせる。程良く濡れ、また刺激を受け膨張したところで俺は肉棒をカサンドラから離す。名残惜しそうな目を向けるカサンドラだが、今はそれ以上を求めない。
「そのままちゃんと舐めてろよ……くっ……ゆっくり力を抜け……」
「んっ! くあぁあ……お、おし、りぃ……」
 かなりキツイ。俺は濡れてもいないリーネの菊門に肉棒を強引に押し入れた。本能が理解しているのか、リーネは初めてのはずだが力の抜き具合を心得ているかのように、抵抗感はあるもののゆっくりと肉棒を受け入れていった。
「すご……い、いれられた、だけで……きもち、いい……」
「ほら、休むんじゃないよ。自分だけ気持ち良くなってどうする」
「は、はい、ゴメンナサイ……ん、クチュ、ベロ、チュ……」
 淫唇との接吻を再開させたリーネ。俺はそれを届けてから、ゆっくりと腰を動かし始めた。
「ひぐ、ん……チュ、クチュ……ん、ひぅう! ん、ベロ、チュ、クチュ……ひんっ!」
 動く度に小さな喘ぎ声が漏れる。それでもリーネは懸命にクンニを続けるが……
「ひあっ! ダメ、も、んっ! こ、これ……ひゃあぁあ!」
 もう舐めている場合ではないらしい。まったく、堪え性のない……カサンドラもやれやれと俺に向け肩をすくめてみせた。後で別のお仕置きが必要だな……それはそれとして、初めてのアナル挿入で逝ってもらうか。
「おし、おしり、すご、い、こんな、に、んんっ! きも、きもち、いいん、だ、ん、ふぁ、きっ、くぁ、んぁああ!」
 俺は床に腰を落としリーネを持ち上げ、そのまま俺の上にリーネを乗せる。足を広げ腰を動かし、リーネは俺の上で喘いだ。暇になったカサンドラは手でリーネの中に入ったバイブを押しつけるようにしながら回し始め、身体の割に大きな胸を空いた手でこねくり回す。
「ドスケベ、こうやって村中の男に抱かれてたのか?」
「そ、そんなことは……ん、はぁあっ! い、これ、いっ、ちゃ、んっ!」
「なんだよ、ケツは初めてなのに逝くのか? 本当にスケベだなリーネは」
「だっ、ん、は、はい、り、リーネは、スケベ、ドスケベ、なの、ん、い、きもち、い、いい、んぁあ!」
「淫乱リーネちゃん。ご主人様にケツで逝かせてもらって……嬉しいか?」
「あっ、は、はい、す、すごく、うれし、うれしい、です、い、いんらん、リーネは、んぁあ! リーネ、は、ふぁ! す、すけべ、だから、んんっ!」
「スケベだから……なんだ?」
「スケベ、だから、は、はじ、はじ、はじめて、でも、おけ、おケツ、おケツで、いっちゃ、いっちゃ、う、ん、ふああ! い、いっちゃ、んっ!」
「逝くのか……ほら逝けよ、スケベ。淫乱リーネ」
「は、はひ、い、いきま、いきまふ、リーネ、いき、いく、いく、いく、いっ……んぁあああ!」
 カサンドラが触れていたバイブに圧迫感。急速な締め付けにバイブが滑り、膣から飛び出した。と同時に、膣からは潮が噴き出した。
「おいおい……ハハハ、こいつは本当にとんでもないドスケベだな」
 膣だけでなく、肛門も腸もぐっと力がこもり……肉棒をちぎる気か、という圧迫を受ける。その圧迫に対し、肉棒は射精という応酬をしかけた。
「ふあ……奥、奥に……熱い……あは、ん、すごい……」
 身体を震わせながら、リーネは主からの恵みを受け入れ幸福にまた震えた。ゆっくりと肉棒を引き抜くと、コプッと軽い音を立て精液があふれ出てくる。
「なんだよ、もったいない……ほら、コッチにケツ向けな」
 言われたとおりリーネはまだ床に手を付き腰を下ろしているカサンドラに近づき、顔に尻を向けた。
「可愛いケツしてんな……ん、クチュ……」
「ひあっ! か、カサンドラさん……それ、きもち……んっ!」
 小さな尻を両手で押し広げながら、溢れる精液を丹念に舐めるカサンドラ。当然その舌はリーネに新たな快楽を与えるが、そう長くは続かない。
「なあ……ご主人様。そろそろ……さ」
 足を広げ自ら膣を弄り始めるカサンドラ。さて、カサンドラはどうやって遊んでやろうか……そう思考を巡らし始めたときだった。
「!」
「ご主人様!」
 カサンドラとセイラがいち早く気付き、壁に駆け寄る。俺も二人に僅かながら遅れたが壁に駆け寄り、二人と同じく掛けてあった自分の武器、ショートソード「吸血丸」を手にする。
「二人ともコッチ!」
 カサンドラが狼狽えている姉妹に声を掛け招き寄せた。
「は、はい」
「なに、なんなの……」
 不安そうな二人を部屋の隅に匿い、俺達は武器を構え周囲を警戒した。
「ったく……これからって時によぉ」
 軽口を叩きながらも、カサンドラの目は険しく真剣だ。
 警報装置が鳴ったのだ。俺達にしか聞こえないような高周波数の。防犯用として窓にしかけていたもののどれか……俺はとにかく状況を確認するために、やはり防犯用に置いてあったロケーションの魔具を手に取り屋敷内を見渡した。
「……おかしいな、開いてる窓が一つもない」
 警報装置の置いてある窓を見渡しても、開けられた形跡も、むろん割られた形跡もない。そして……周囲に人影もない。どういうことだ?
「誤作動でしょうか……」
「……師匠の作った装置だ。それは考え難いな」
 だが普通に考えれば、セイラの意見の方が正しいような……そう思えるだけ、周囲には何の変化もない。
「ドアから入ってきたとか?」
「それなら別の音が鳴るはずだ」
 ドアはドアで当然装置は取り付けているが、そちらは自分達や来客が出入りするために音を変えている。聞こえたのは間違いなく、窓から侵入されたときの音。
「……テレポートか何か、魔法の力で侵入した……」
「そう考えるのが無難だな……だとすれば、発見できないってのは不気味だな……」
 隠れているのか見えないのか、いずれにしても発見できないってのは厄介すぎる。魔力を探知するとか、その手の魔具や魔法を駆使すれば発見できるかも知れないが、ロケーションの魔具だけでは見渡すことしかできない。
 ……膠着状態が長く続く。俺は警戒を怠らずロケーションで相手を探し続けているが……見あたらない。この地下にある調教部屋に近づけば、また別の警報装置が作動するはずだから接近に気づけるのだが……。
「装置を解除された……って事はないか」
 ロケーションで見る限り、その様な形跡もない。なんなんだ? 本当に誤作動だったのか……そう疑い始めたときだった。
「ん?」
 一瞬、何かが見えたような気がした。なんというか……「影」だけが動いた、そんな感じのぶれた印象。その直後、また警報装置が鳴った。
「出ていった……ようだな」
 一瞬見えた影は、廊下から窓を経由して外へ……あれが侵入者のものならば、出ていったのだろうと判断できるが……窓には何の変化もない。アレは一体……なんだ?
「……なんだよ、興ざめだな」
 それは侵入者との戦闘が出来なかったからなのか、それとも中断された行為に対してなのか……カサンドラにしたら、どちらもだろうな。
「何が狙いだったのでしょうか……」
「判らん……可能性は色々あるからな」
 単純な物取りから、ローエ信者の復讐、カサンドラにかかった賞金……いずれも可能性は充分高い。判っているのは、ひとまず脅威は去ったということだ。
「さてと、どうしたものか……」
 俺は武器を壁に掛けながら、思案する。一時的に脅威は去ったが、問題が解決したわけではない。安全を考えるなら、これからすべきことは……
「カサンドラ、セイラ」
 俺は二人に指で指示を出す。二人は黙ってその指示に従った。
「やっぱ、こうしてるのが安全だよな……クチュ、ん、チュ……」
「そうですわね。夜通し、一緒にいることが大切です……チュ、チュパ、ん……」
 カサンドラは俺の肉棒を、セイラは俺の尻を、それぞれ舐めている。結論としては、朝になるまでこの部屋にみんなでいようと、そういうことだ。ここなら進入経路は一つしかないし、武器も置いてあるから問題ない。唯一防御に不安があるだけだが……寝室に戻ったところで、防具を着たまま休むのもなんだしな。
「フィーネとリーネは……って、もう始めてるのか」
 指示を待てなかった二人は、互いに気分を盛り上げていた。本当に仲が良いよなあの姉妹は。世間的には仲が良いってだけで片付けられる関係じゃないが。
「なあ……ん、クチュ、次は私だよな?」
「あら? 私だってまだしていただけてないんですよ? ん、ベロ、クチュ……」
「そうだな……オナニーしながら続けて、先に逝けた方からにしようか」
 二人とも片手で膣をまさぐり腰を振り始めた。くっくっくっ、中々良い眺めだな。侵入者のことは気になるが、それは夜が明けてからで良いだろう。まずはこいつらと愉しむこと。俺は主としての務めを続けた。

「異常は……うん、どれも無いようだね」
 屋敷の警報装置を点検して回りながら、師匠の旦那さん、ダグが確認する。やはり装置に異常はないか……装置を作ったのは師匠だし、そうそう誤動作なんて起こすとは思っていなかったが……やはりあの「影」が侵入者ってことか。
「その影なんだけどね、ちょっと心当たりあるんだよ」
 点検中に俺がかいつまんで話した内容について、顎をつまむように手を当てながら旦那さんが話し出した。
「シャドーダンサーって知ってる?」
 俺は一度眉間にしわを寄せてから、首を横に振った。
「影の踊り子……と言うより、影を操る者って感じかな。影の中に隠れたり影から影へ移動できたり、そんな秘術めいた能力を持った職種だね」
「影から影へ? それって……つまり、実体を見せることなくここへ進入することも可能……ってことか?」
 詳しいことは判らないけれど、と旦那さんは付け加えた上で説明を続ける。
「レイリー君の見た影というのが見間違いでなければ、僕にはそのシャドーダンサーしか思い当たるものが無いんだよね……妻が作ったこの装置なら、影を伝って移動したとしても魔力を感知して警報音が鳴るはずだから」
 コン、と窓枠に小さく設置された警報装置を指の関節で軽く叩きながら自信ありげに言う。
「これの性能は、レイリー君なら身を持って経験済みだもんね」
「もうその話はいいでしょうが」
 俺が師匠の館に潜入したときに活躍したのがこれと同型の装置だからな……旦那さん、たまぁにこの手の嫌味を言うんだよなぁ……たぶん単なる天然なんだろうけど。
「あはは……まあそんなわけで、犯人はシャドーダンサーかなと……もし僕の推理が正しければ、一人心当たりがいるんだ」
 旦那さんは道具箱の隅に入れてあった紙束を取り出し、それを一枚一枚チェックしていく。どうやら紙束は手配書リストのようだ。
「なんでそんな物を」
「ああ……誤ってこの手の人達に魔具を売ってしまわないためにね」
 なるほど、防犯の為か……
「それと、妻が君達に仕事をさせるためにもって……」
 賞金稼ぎまでやらせる気かあの人は。
「あった、この人……その手の世界では結構名の知れたアサシンらしいよ」
 ふむ……名前はアヤ、か。東側の出身か? 珍しい名前だな……ん、でもダークエルフなのか。この手配書の写し絵がソックリだとすれば……これは渡りに船、飛んで火に入る夏の虫って奴か?
「なんとなく君が何を考えているか判るけど……」
 にやけた俺を見ながら、旦那さんは苦笑混じりに警告を発する。
「かなり危険な人物だよ。依頼を受けたらどんな人物でも必ず殺してきたらしいからね……その際罠の解除もしていったらしいから、ローグとしても一流みたいだし……気をつけてよ」
 ローグか……ますます欲しくなった。よし、この女は必ず眷属にしてやる。
「あっ、お疲れ様ですダグさん」
 屋敷内を清掃していたフィーネが近づき、丁重な挨拶をする。そんなフィーネを一目見て、旦那さんは顔を背けてしまった。
「あ、ああ。こんにちは、フィーネちゃん」
 顔を真っ赤にして、それでもどうにか返事をする。なんだってこんな人の奥さんが、あの師匠なんだろうね……。
「どうですか? このメイド服。フレアさんのデザインなんですが、私凄く気に入ってまして」
 あの人のデザインだから、旦那がこうして顔を背けているんだろうが……って、判っててやってないか? フィーネ。
 フィーネが着ているメイド服は、どちらかといえばボンテージに近い。というより、ボンテージにスカートが付いただけと言った方が早い。ボンテージそのものの露出度は高く胸も完全に開いているが、ボンテージの下にブラウスを着ているため全体の露出度は低めだ。とはいえ、胸を強調しているのに変わりはなく、旦那さんのような純情な人なら目を背けたくなるだろう。
「うん、よく似合ってるよ……」
「そうですか? 良く見てくださいよぉ」
 あどけない「ふり」をして旦那さんににじり寄るフィーネ。あーあ、旦那さん完全に顔が真っ赤だ。
「それくらいにしとけ、フィーネ。さっさと掃除に戻れ」
「はぁい。ではダグさん、ごゆっくり」
 お辞儀をして、そそくさと持ち場へ戻るフィーネ。まったく、ああやって自分を見る男の反応を愉しんでやがるんだあいつは……今度露出調教でもするかな。
「悪かったね、旦那さん」
「いや、アハハハ……」
 汗を拭きながら、旦那さんは乾いた笑いを浮かべた。
「それにしても……ああいうのはダメですか? 奥さんは普段もっと露出の高い服を着てるじゃないですか」
 あの人は普段から露出の高い……というか、ほとんど水着って格好してるからなぁ。
「いや、妻のは慣れているというか、妻はその、あっ、愛してるからその……たはは……」
 ……訊かなきゃ良かった。こんな形でのろけられるとはね……ケッ!

 あれからセイラに命じ、シャドーダンサーのことを調べさせた。彼女が得た情報は旦那さんの話とほぼ一致していた。
「シャドーダンサー自体は特に、暗殺者限定というわけでもないようです。ですが能力的に、ローグと併用されては……厄介ですわね」
 影から忍び寄り、ローグの技術で罠も突破されては……厳しいな。対個人なら、ほとんど無敵を誇る能力だと言っても良いだろう。暗殺者としての信頼が厚く、首に掛かった賞金が高いのもうなずける。
「私よりもこんなに高いなんて……面白くないね」
 同じ賞金首としては、額の差で全てを評価されているようで面白くはないだろう。だがカサンドラの賞金だって相当な額なんだがな……ただ最近は山賊業から足を洗ったせいか、額が右肩下がりになってはいるが。
「私といたしましては……教団が彼女に、いくらで私の首を取ってこいと命じたのかが気になりますわね」
 相手が暗殺者となれば、やはり狙いは裏切り者のセイラ。雇い主はローエの教団と考えるのが無難か。これだけの者を雇うんだ、依頼料は相当なものだと思うが……まったく、しつこいねあの教団も。
「返り討ちに出来れば、こちらはかなり旨いことになるんだがなぁ……」
 まずこのダークエルフ自身が手に入れば、かなりの戦力。俺の眷属にするには、美貌も戦力も申し分ない。そして彼女を眷属にしてしまえば、おそらくもう教団はちょっかいを出さなくなるだろう。これ以上俺達を突けば自分達が危ないと、悟るはずだ……そう思いたい。あいつらは喜んで苦悩を呼び込む連中なだけに、むしろ躍起になってくる可能性もあるから何とも言えないが……。
「どうやって? 昨日だって何もしないで帰ったじゃねぇか」
 そこなんだ。昨日は様子見なのか下見なのか、何もしないでそのまま帰った。俺達が地下にいることに気付かなかったのか……いや、それは無いだろう。彼女はローグでもある。人の気配を探ることも出来るだろうし、罠にびびる事もないはず。なら何故帰ったのか……そこが判れば旨く対処できそうなんだがな。
「私が囮になって、おびき出してみては?」
「それは危険すぎる。相手の能力を考えれば一発で首を刎ねられることもあり得るんだからな」
 相手の影に移動し、背後から……なんて、おそらく今まで何度もやって来ただろう。
「しかし、おびき出さないことには埒があきそうもありませんよ? いつ来るか判らない刺客に怯え続けるのは……私としてはゾクゾクするのでいっこうに構いませんが……皆さんが耐えられませんでしょう?」
 こーいう状況も愉しむか、真性のマゾってのは。さておき、セイラが言う通りいつ来るか判らない相手を迎え撃つのは難しい。おびき出せるならその方が手っ取り早いのは確かだが……。
「だよなぁ。昨日だってなんだかしらねぇけどやらずに帰ったし……今日だって、また帰っちまうかもしれないしなぁ。ったく、イライラするな」
 確かに、今日も来てそのまま帰る可能性もある……随分慎重なようだからな……ってことは、昨日のあの状況では、彼女が不利な条件があったということか? なんだそれは……それが判れば、おびき出すことも迎え撃つことも出来るんだが……。
「ねえ……影って、どこまでが影なの?」
 突然、リーネが突拍子もないことを言い出した。
「なによそれ……リーネ、何が言いたいの?」
 姉の問いに応え、妹は素直に疑問をぶつけた。
「うん……例えばね、真っ暗な部屋とか廊下とかも「影」なのかな? って思って……」
「……セイラ、シャドーダンサーが「影」と認知する大きさなどの範囲は何処までだ? それから、影に移る距離と範囲は?」
 そうだよ、まず敵の情報を調べてきたのならその有効範囲を確認しないと……うっかりしてたな。
「お待ちを……影の大きさは小さすぎると駄目なようですが、光のあるところで作られる影であれば大きさは問わないようです。また有効範囲は視界が良好な範囲。距離はあまり遠いと無理なようですね。また一日に移動できる距離も力量によってある程度限界があるようです」
 セイラが資料から書き写して来た文を読み上げる。なるほど……これで色々絞り込めて来たぞ。
 昨日警報が鳴った窓を思い返してみる。あそこには近くに廊下を照らす蝋燭と、飾り用の壺と土台があったな。つまり外から中へ影を利用し進入するには条件が整っていた。そして地下へ来られなかったのは、地下へ通じる階段が真っ暗……影ではなく闇だったから、シャドーダンサーの能力で移動は出来なかった。おそらく警報が鳴ったことに相手も気付いただろうから、姿を見せながら地下通路に設置された警報を無力化して進むのを躊躇ったのだろう。なるほどね……しかしこれだと、安全策は取れるがおびき出しは難しいな。
 それに……俺は一つ、今更ながら腑に落ちない点があることに気付いた。それを考えると、全てがまた謎に包まれるんだが……可能性の一つでしかないそれを、俺はとりあえず思考の中から除外した。
「……どうでしょうか、レイリー様。このような策は……」
 セイラが提案した作戦は、かなり危険を伴う。しかし……今考えられる状況からすれば、最善の策とも言える。俺達はその作戦を基軸に、更に練り込んだ作戦を立てていった。

「ん、ご主人様もっと……そ、奥、ん、ふぁあ!」
 ベッドをギシギシ言わせながら腰を跳ねるように上下させているのは、カサンドラ。むろん俺の上でだ。
「ああ、そこ、そこをもっと……あふ、素晴らしいです、ご主人様……」
 俺の顔に跨り、唇に淫唇を接吻させながら腰をくねらせているのはセイラ。膣の中に舌を入れてやると、歓喜の声を部屋中に木霊させた。
 これが、作戦の第一段階。こうして3Pに興じていること……も、ある意味大切だが、問題なのは俺達がいる場所。ここが作戦を決行する場所だということだ。
 ここは寝室。昨日とは違い、俺達は広い寝室で暗殺者を待ちかまえていた。そう、これでも待ちかまえているんだよ。ただ、黙って待っていられるほど俺達は辛抱強くないってこと。
 ちなみに、フィーネとリーネは師匠に預けた。人質にとられるとやっかいなのと、彼女達の安全のために。
「いっ、そこ、く、そろそろ……ん、ふぁ、い、ん、あぁあ!」
「もっと、ふぁあ! ごしゅじん、さま、い、もっと、なめ、んっ! おっ、おく、おくまで、きて、あぁ!」
 ……お前ら、状況判ってるよな? まあ、気取られると困るからこれくらい本気でいた方が良いんだろうけど……にしてもなぁ。
「いく、ごしゅじんさま、いく、いくよ、ん、くぁあ! あ、んんん!!」
「はふ、わ、わたくしも、す、すぐ、あ、い、も、もっと、ひあっ! い、そこ、ん、あっ、い、いく、いく、ん、ふぁああ!」
 本気で逝ったな……それは俺もなんだが。妙な緊張感もあってか、なんかいつもとは違う感覚を楽しんでしまった。キッチリと、俺はカサンドラの奥へ精液を流し込んでいた。
「ふぅ……ふふ、なんか久しぶりかもな、この体位でするのも」
「さあカサンドラさん。次は私ですわ。早速替わって……」
 不意に、セイラが横にすっ飛んだ。ガチッという鈍い音と共に。
「セイラ!」
「来たね……無事! セイラ」
 飛ばされたセイラを気遣いながら、俺はすぐに起き上がる。カサンドラもすぐにベッドから飛び退き、下に隠していた斧を持ってセイラに駆け寄る。俺は自分の枕元を見た。そこには、漆黒の肌をした女性……ダークエルフがいた。
「お前がアヤか……」
 俺は奴が動き出す前に、首から提げていたペンダントに手を掛けた。すると、煌々と室内を照らしていた蝋燭の明かりが消える。部屋を真っ暗な闇が包み込んだ。
「これで影に逃れることも部屋を出ることも出来ないぜ……セイラ、無事か?」
「ケホッ、かっ、は……はい、無事です……」
「私がガードに入ったよ。さあ、どこからでも来やがれ!」
 ペンダントと部屋、双方にあらかじめ「仕掛け」を施していた。明かりを消しドアと窓が封鎖される仕掛けを。これは再び呼び出した魔具屋のダグさんにしかけて貰った物。そして彼には、更に師匠から預かってきた防具を持ってきて貰っていた。
「これが無ければ危なかったですわね……」
 セイラが首をさする。そこには何もない……ように見えるが、透明な首輪状の防具がある。もちろん師匠特性。急ぎごしらえで作ってもらった特注品だ……また貸しを作ってしまった。
「どうした……不意打ちしかできねーってわけじゃねぇだろ?」
 内心、ここでいきなり飛びかかられたらどうしようなんて思いながらも、挑発してみる。相手はじっと、こちらの様子をうかがうばかりだ……そう、当たり前だが相手は俺達のことが見えている。当然、俺達も相手が見えている。
 部屋は暗く、窓もカーテンが掛けられ月明かりはほとんど入ってこない。そんな中でも、ヴァンパイアの能力を持つ俺達には暗視の力がある。そしてダークエルフでありシャドーダンサーである彼女もしかり。つまりこの状況では、視界に関して言えば互いに不利にも有利にもならない。だが影を無くすことで相手の能力を封じることには成功している。
 ……まだ動かない。緊迫した時間が流れていく……そんな時間が長かったから、俺は相手をじっくりと観察することが出来た。刺客は両手に一刀ずつシミターを握っている。二刀流か……武器を構える姿はしなやかで美しいな。ツンと尖った耳と肌の色、ダークエルフの象徴たる特徴もその美しさに華を添えている。全体的に細身だからか、胸の大きさが目立つ。髪はアップにしていて後ろでまとめている。ふむ……見れば見るほど、眷属に是非加えねばと思えてくるぞ。
「うらぁあ!」
 待ちきれず、カサンドラが斬りかかった。刺客は襲う大斧を左手の曲刀で受け流す。そしてそのまま右手の曲刀をカサンドラに向ける。
「くっ!」
 どうにか避けたか……だが横腹に赤い筋。僅かに切られたか。相手は無傷、こちらのダメージは……大きなベッドが真っ二つと、カサンドラのかすり傷ってとこか。
 大振りのカサンドラに対して、刺客はコンパクトで無駄のない動きでかわし、隙あらば斬りかかってくる。だがカサンドラも無駄に斧を振り回しているわけではない。向かうシミターを避け、斧を構え直し次に供える。互いに攻防譲らない、緊迫した戦闘が続く。
 それをじっと見ている……ってわけにはいかない。カサンドラは笑顔すら見せこの戦闘を楽しんでいるようだが、その楽しみをずっと味わって貰うわけにはいかない。俺は二人から離れ、近くにある机、その引き出しを開け中から小袋を取りだした。毎度お馴染みゾンビパウダーだ。
 ジリジリと、刺客は追い込まれていく……いや逆だ。ゆっくりと窓に近づいている。このままでは逃げられるぞ。そうなる前に……俺は慎重に近づき、粉を相手目掛けて投げつけた。そしてジッと相手を見つめ……ダメか、効いてない。相手は間違いなく「悪」だが、精神力が高く抵抗してしまう……こうなったら、その精神力が低下するとき……疲れたところを狙うしかないのか? だがそんな悠長なことを言っていられるか……その前に逃げられる可能性だってあるんだ。
「……はっ!」
 不意に、刺客の足下から上へ振り上げられたのは……鞭だ。セイラがじっくりと好機を待っていたのか。かすり傷しか負っていないが、それで充分。それだけでも多少は「吸血」出来たはず。それで心身共にダメージを与えられたはずだ。
「おらぁ!」
 隙を付き、カサンドラの一撃。刺客はそれを受け止めたが……その為に、シミターが砕けた。飛び散る破片、そこをすかさず……俺が間合いを詰める。
「ぐっ……」
 甘かったか……砕けたシミターの柄で、脇腹を……だが、これで……
「レイリー様!」
「レイリー、大丈夫か!」
 すぐさま俺に駆け寄ってくる眷属達。俺は腹を押さえながら、それでも応えてやった。
「どうにか……ぐっ、だがこれで……勝ちだな」
 セイラに脇腹の治療をさせながら、俺は倒れ込んだ刺客を見下ろした。首には牙の痕。どうにか、相手の動きを封じるくらいには吸血できたようだ。
「……」
 刺客……アヤはただ俺を睨むだけで、一言も話さない。まあ、どんな声かはこれからのお楽しみにするさ。
「ふぅ……さてカサンドラ、セイラ。頼むよ」
 セイラの治療を終えたところで、俺は二人に命じる。すぐに二人は前後に俺を挟み、そしてかがみ込んで俺の肉棒と尻を愛撫し始める。今回はセイラが前だ。
「あら、もうこんなに……ん、クチュ……ふふ、美味しい……チュ、チュパ……」
「ん、チュ、ベロ……こっちも美味しい……ん、チュ、ピチャ……」
 俺達の痴態を、アヤは睨み続けた。目をそらすことなく、じっと。射抜くようなその視線に気圧され、縮み上がりそうにもなるが、二人の愛撫の巧みさと、なによりこんな女がもうすぐ俺のものになると思えばむしろ興奮の材料にすらなった。
「……そろそろ出すぞ」
「はひ、どうぞ……ん、クチュ、チュパ、チュ、ん、んふ、クチュ……ん、んふぅ!」
 二人に攻められるとあっという間だな……セイラは俺の精液を口いっぱいに頬張り、アヤに近づいていく。
「口を開いて上を向け」
 口移しに飲ませるのは危険だと判断し、俺は術中にはまっているアヤに命令を下した。アヤは仰向けになって口を開く。
「ん、あふ……ふふ、どう? ご主人様の精液は。美味しいでしょう?」
 ねっとりと垂れ落ちる精液が糸を引きながらセイラの口からアヤの口へ。なんか妙にエロい光景だなこれ。
「こぼさず飲め」
 口の中に貯まった精子を、アヤは喉を鳴らして飲み込んだ。口を開けるときもそうだったが、まだ僅かばかり抵抗感が見られる。たいした精神力だよ。
「……」
 淫魔の催淫効果は効いている。だが僅かに身体をよじりはしても声を出さずに耐えている。ふむ……そんないじらしい姿も魅力的だが、あまり悠長にしていたら術が解けるな。
「カサンドラ、セイラ」
 声を掛けると二人はアヤに近づいて半身を起こし、カサンドラは胸を、セイラは陰部を攻め始める。
「コイツ……良い胸してるなぁ。すげぇ柔らけぇ……触ってるコッチが気持ち良いくらいだ」
 背中越しに胸を乱雑に鷲掴み弄ぶカサンドラ。カサンドラの大きな手でも持て余すその胸は、こぼれる肉の柔らかさをまざまざと俺に見せつけた。
「ここも……とっても可愛らしいですわ。あまり使われていないみたいですが……ん、クチュ、ふふ、やはり我慢はしていても、濡れてますのね。美味しいですわ……ん、クチュ、チュ……」
 かがみ込み、自分の命を狙った相手に愛撫するセイラ。そんな相手だからこそ、セイラも興奮しているのだろうな……セイラも股間を濡らしているのが見える。
「セイラいいぞ、我慢しなくて」
「……では失礼します。ん、ふふ……さあ、あなたも感じて……んっ! クチュ、チュ……」
 片手を己の膣へと運び、指で中をかき回すセイラ。湿った音がセイラの前後から聞こえてくる。
「さて、それじゃあ俺も参加するかな。カサンドラ、頼むよ」
「ああ、いつでも良いぜ」
 俺はアヤの前に立ち、回復しいきり起った肉棒を胸の谷間に埋める。カサンドラが胸を横から強く押し、アヤの胸で俺の肉棒を圧迫させる。
「これは確かに……柔らかいな」
「だろ? パイズリにはちょうど良さそう……チッ、なんか羨ましいぜ」
 いや、カサンドラの胸はあれで、弾むような弾力が魅力なんだがな。まあ今カサンドラを惚れるのは止しておこう。今はアヤを屈服させるために、彼女をいやらしく褒めてやらなければ。
「いいぞアヤ……素晴らしい胸だな。これで何人の男を逝かせてきたんだ?」
 どう尋ねようと、アヤは一切口を利かない。未だ暗殺者に徹しているのか……まあ無理に喋らせるのもなんだ。ここはこちらが一方的に言葉で弄ってやるか。
「本当にいやらしい胸だな……奉仕する為に存在する胸だぞこれは。ダークエルフってのは産まれたときからこんなにいやらしい胸を持っているのか?」
「淫魔の血が混じってるから肌が黒い、ただのエルフだったりしてな……ホントいやらしい胸だよ」
 目つきが変わった……より鋭くなった。種族のことを言われたのが気に障ったか……ならちょっと方向を変えよう。
「それとも……アヤがいやらしいのか。そうか、毎日自分で揉んで柔らかくしているな? そうでなければこんな胸……くっ、説明がつかないものな」
「なるほど……いやらしい胸にはそんな秘密が。もしかして、胸だけで逝けるんじゃね?」
 ふむ……多少目つきが柔らかくなったか。だが何にしても……くっ、俺が限界か。
「出すぞ、口を開けろ」
 腰を激しく動かし、そして胸から外し口へ……勢いよく精液はアヤの口内へ。口元からこぼれる精液はカサンドラが指ですくっている。
「飲め」
 二度目の精液……これでかなり効いてくるだろう。カサンドラは指に付いた精液をアヤの乳首に塗りたくっている。
「ハァ……ハァ……」
 息は荒くなった。だが……
「どうだ? これが欲しくなったんじゃないのか?」
「ハァ……んっ、ハァ……」
 息を荒げるだけ。まったく、たいした精神力だ。本来ならここである程度屈服させなければ、眷属化が上手くいかない可能性も出てくるが……これ以上は難しいな。仕方ない、そろそろ本番に移るか。
「セイラ、もういいぞ……足を広げろ」
 抵抗は先ほどよりも弱くなっているのか、素直に足を広げたアヤ……それにしては素直すぎないか?
「……もう一度訊く。俺が欲しいか?」
 今度はじっくり待ってみた。じっと淫唇を見つめる……ピクピクと震え、待ちこがれているのは間違いない。身体は限界を迎え始めている。精神はどうだ……。
「……誰にも触られずに逝ってみるか? それはそれで気持ちいいぞ」
 痴態を晒させることで屈服感を味わわせるのも良いかもしれない。一度諦めたが、やはりここは勝負だ。じっと、根比べをしてみようじゃないか。
「ハァ……ハァ……んっ! くっ、ハァ……」
 アヤはジッと俺の肉棒を見つめている。その視線を感じ、セイラが俺の後ろから肉棒を軽くさすり始める。大きくそそり起つ肉棒をアピールするために。
「これを見ていやらしいことを想像しているな? いいのか、想像だけで……」
 俺はもう、コイツの中に入れる想像をしてしまっているよ。くそ、こっちは何もしていないのに我慢の限界を迎えそうだ。
「……いっ……ハァ」
 ん? 今なんか言ったよな……
「聞こえないぞ。もっとハッキリ言え」
「いっ……れて、ハァ……んっ! ハァ……いっ、いれ、て……ハァ、んっ!」
 良し! 待ったかいがあった! 俺は今すぐにでも飛び込みたいのをぐっと我慢し、ゆっくりとアヤの腰に自分の腰を近づけていく。
「よく言えたな……褒美をやろう」
「ハァ……くぅっ!」
 思っていたよりも可愛らしい声が声高に短めに響く。精神というのは一度壁が決壊すると脆くなる。アヤは待ちこがれた俺の肉棒を迎え入れられた悦びに、膣を締め上げる。
「いいぞ、腰を振れ」
 命じたと同時に激しくなるアヤの腰。俺も負けじと奥へ奥へと突き入れる。
「なあ、もっと声聞かせてくれよ……」
「なかなか可愛らしい声でしたよね?」
 カサンドラとセイラが、アヤの胸をそれぞれ舐め、揉み、攻め上げる。
「んっ、くっ……ハァ、ん、くっ! ハァ……はぁあ!」
 それでも声を抑えるアヤ……しょうがない、ここは……
「感じるままに声を出せ。命令だ」
「あっ……あ、いや、ん、こえ……あぁ! きかれ、はずかし……んっ! か、かんじすぎて、わた、わたし、も、もう……はぁあ!」
 甘い声がせきを切ったかのようにあふれ出す。我慢していた声を聞かれ、アヤの心は更に屈服しただろう。これは……もらったな。
「逝くときは逝くと、ちゃんと話せよ」
「い……もう、いき、いきま、す、ダメ、こ、こんな、こんなの……ふぁ、い、いく、いく、いく、いく、いく、いっ……くっ、あ、ふぁ、ふぁああああ!!」
 肉棒を千切ろうとする膣。ヒクヒクと蠢くその膣の奥、子宮へと、俺は精液をドクドクと送り届けてやる。そして同時に首筋に牙を立て残りの血も頂く。
「あああ……こ、これで……」
 糸の切れた人形のように、アヤはカクリと首を折り気を失った。俺はアヤをベッドに……って、そういや斧で真っ二つになったんだっけ。しかたなく、俺はその場に横たえてやった。
「さて、やれることはやった……」
「大丈夫だろ? これで俺達の仲間……だよな」
「ええ、私もそのような感触を得ていますが……」
 やはり、皆不安なのだ。眷属の二人にしてみれば、自分達以上の抵抗を見せたアヤに対して、もしかして……という疑念を振り払えずにいる。それは俺も同じ。だが感触はある……眷属にしたという感触は……。
「ん、目を覚ましたか」
 程なくして、アヤは目を覚ます。さて、恒例儀式を始めるか……
「お前の言葉、お前のやり方で構わない。俺への忠義を見せてみろ」
 さてどう出るか……アヤはゆっくりと起き上がり、そして……
「動くな!」
 素早く俺の背後に回り込み、腕で俺の首を絞めている。くそ、油断しすぎた……カサンドラもセイラも俺を人質に取られ、身動きできないでいる。
「そう、そのまま動かないで……ふふ」
 アヤは何か呪文のようなものを唱え始めた。なんだこれは……なにかの魔法か? しかし聞き慣れない言葉だ……警戒しながら身じろぎせず出方をうかがっていると……突然、スッと消えるように首への圧迫感が無くなった。
「レイリー!」
「レイリー様!」
 駆け寄る二人。どうやら、アヤが消えたようだ。まるでこの暗闇にとけ込むように……逃げたのか?
「明かりを灯してください」
 アヤの声? どこからしている……俺はとりあえず、ペンダントに手を掛け明かりを灯した。
「私はここに」
 明かりが灯ることで出来た、俺の影。アヤは俺の影から這い出るように姿を現した。
「シャドーダンサーの秘術でございます。私は主の影と同化し、身も心も全てを主へと捧げました」
 片膝を付き拳を片方床に付け、深々と頭を下げてアヤが宣言する。
「これで私は、もう主の側を離れることが出来ません。主が死ねば、私も死にます。これが私の忠義でございます」
 まったく、驚かしてくれる……しかし俺の影と同化したって……どういうことだ?
「もうちょっと詳しく話してくれないか?」
「はっ……」
 アヤの説明によると、シャドーダンサーの秘術によってアヤは俺の影と同化し、常に俺の影の中に居続けられるのだそうな。通常は影の中に長時間いられないらしいが、それを可能にすると。また主の影以外にも移動したり隠れたりすることは出来るらしいが、主から遠くに離れられない制約を受けるらしい。そして先ほど言ったように、主を失うと影も失うことになり、そのまま死んでしまう……なんかすごい秘術だな。
「生涯を主と共にします。ですからこの身体、この心、いかようにも主の思うがままに……」
 これは……すごい忠誠だよな。なんか予想以上の眷属効果だ。これはまた素晴らしい女を眷属に迎え入れられたな。俺は隠すことなくこの気分を顔に表す。それを見てアヤはちょっと照れたように微笑んだ。おお、憂い奴憂い奴。
「一つ、お聞きしてもよろしいですか?」
 不意にセイラが片手を上げながら進言する。俺は頷いて質問の許可を与えた。
「昨日、進入してすぐに帰られましたが……あれはわざとですか? あなたほどの方が、装置に気付かなかったとは思いがたいのですが……あえて私達に、あなたの存在を知らしめるためだったのでしょうか?」
「……ご推察の通りです」
 そう、それ! 俺もちょっと引っかかってたんだ……アヤはローグとしての腕前も一流なのだとすれば、セイラの推測の通り怪しい行動なんだよあれは。だから一度思考の外へと追いやった推理だったんだが……その推理は正しかったのだとアヤは暴露する。
「なんでそんなめんどくせぇことを?」
「私達へのプレッシャーですか?」
 カサンドラとセイラが矢継ぎ早に質問する。アヤは少し考え……口を開いた。
「もう私は主のしもべですから、雇い主への義理立ては必要ありませんね。あなたがおっしゃる通り、雇い主の注文です。出来る限り苦しめて殺すようにと」
「……やはり雇い主は、ローエ教団の連中か?」
「左様でございます」
 やれやれ……予想していたことではあったが、本当にしつこいな。
「だったら……今回のこの仕掛けだって、本当は気付いていたんじゃないのか?」
「はい。ですからあえて誘いに乗り、ギリギリのところで逃げる手はずでした。それで更なるプレッシャーを与えようと……しかし失敗に終わり、今に至ります」
 ……怖いな。そこまで計算されていたのか……よく眷属に出来たよ、俺。
「この様なことを私が口にするのは何ですが……」
 ちらりと俺を見つめ、視線をそらしながらアヤは続けた。
「主の……その、女性に対する執念がここまでとは……侮っておりました」
「それさ、褒めてる?」
 脇腹を刺されてでも手に入れたかった、そんな女だったのも敗因の一つだな、アヤ。
「申し訳ありません……ですが、主の執念によって、私はこうして主に仕えることが出来ました」
 また深々と頭を下げるアヤ。本能を書き換えられたことで「今」を幸せに感じているアヤは、この結果にむしろ感謝すらしているのだ。
「ま、もういいじゃねぇか。なあ、そろそろ続きやろうぜ」
「なんだよ、続きって」
 堅苦しい話が苦手なカサンドラが、強引に話を終わらせ急かしてくる。
「決まってるだろ、私達がやることなんて。まだ夜は開けてないんだぜ?」
「そうですわね。ベッドは……ああですから、地下室に移動いたしますか?」
 まったく……と言いつつ、新たな眷属の具合を早速試してみたいと思うのも事実。さて、アヤはどんな風に調教してやるかな……俺達は影も包む闇の中へと、心躍らせながら向かっていった。

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